12月24日の灯り
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彼は目を丸くして、ネックウォーマー越しに顎を撫でて言った。
「なぜ?
おまえさん、自分でも分かっとるじゃろう。
もう虫の息だと。
おまえさんが願えば、寿命を延ばすことも出来るが?」
「いいや、
俺はもうずいぶん生きた。
子供達や孫達が時間やお金をかけて色々としてくれるが、
もう…そんなことを俺にしなくていいように…
会話も出来ない、顔も識別出来ない、こんな俺なんかの為にしなくていいように…
どうか俺をむこうへつれていってくれ。
妻が…むこうで待っているはずだから…」
俺の目尻からひと筋の涙、それを認めると、彼はまたポンチョの下をゴソゴソしだして、手を高く掲げた。
その手には柊の枝葉が飾られた小さなベル、りぃんと鳴り響かせると、光の波紋が彼の足元から広がったのだ。
光が眩しくて目を強く閉じ、また開いた時に──俺は、雪降る病院の外の宙を浮いていた。
【…午後11時04分、ご臨終です…】
【…おじいちゃん…!!】
自分が横たわっていた病室に沢山の息子娘孫達が、わんわんと泣いていた。
…