シークレットガイド
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#こだま
「灯琉? 本当に? 本当の本当に…行っちゃうの…!?」
えだっちが眼鏡を外して、パーカーの袖で一生懸命に涙を拭った。
それを見た灯琉が、今まで我慢してたんだろうか、堰を切ったように涙を落として、手の甲で何度も目を擦る。
そして、大きく息を吸い、遠くへ思いきり吠えた。
「行きたくないよォーーー…!
離れたくないよォーーー…!
ここで…っ…大人になりたかったよォーーー…っ!!」
切なくこだまする中、夕陽の逆光で黒ずむ灯琉の背中に今ちゃんが飛びついた。
それにつられるようにえだっち、芦屋クン、そして僕も、両腕を広げて灯琉を囲う。
「灯琉ぅ。灯琉のばかぁ。
なんで、なんでそんな大事なこと、ボクらに黙ってるのさぁ。
いくらなんでも、急すぎるよぉ」
「ごめん。ごめん。ごめんなぁ。
でも、家の事だから…落ち着くまで…話せなくて…
…明日もう…学校行かない…から…
…どーしても…今日…お前らと…うううっ…」
これ以上灯琉はしゃべれなかった。
おしくらまんじゅうみたいに固まった僕達は、ふとバランスを失って地面にヘナヘナと座り込んだ。
芦屋クンが過呼吸みたいになって、すごく苦しそうだった。僕達みんなで背中をさすると、少し落ち着いて、でも、
「ああああーーー、出会ったばかり、なのに、お別れなんて…そんなの、ない…っ」
と、うずくまったまま涙を地面にボタボタと落として言った。
灯琉は芦屋クンの髪の毛をクシャクシャに撫で回した。
オレンジの空がゆっくりと闇と混じる中、僕達はいつまでも涙が止まらずに…わんわん泣いた。
…