シークレットガイド
24/41ページ
#駄菓子屋
「今、何時?」
「えーっと、11:56」
灯琉に時間を聞かれて、えだっちが自慢の腕時計を見た。
「おーなーか、すーいーたーぁ」
今ちゃんの形相がちょっとすごい(笑) 相変わらず、食べ物の事になると目の色が変わる。
「わかったわかった、『やまだや』に寄るでいいんだよな? さっ、降りるぞ!」
「芦屋クン、一旦サイクリングロード降りるよ。離れないで、ついておいで」
「う、うん」
灯琉に続き、僕達はサイクリングロードの土手を降りて、とある細い路地裏へと自転車を走らせた。
辿り着いた先は、僕達がよく行く駄菓子屋『やまだや』。遊んで小腹がすくと、必ず顔を出す所だ。
「いらっしゃい。おやまあ、今日は平日だったかね?」
店主のおばあさんが奥から出てきて、ランドセル姿の僕達を見て目を丸くした。
「日曜だよ。ランドセルの事は気にしないで。座敷借りていいですか?」
「いいよ。鉄板は使うかい?」
「もちろんー! もんじゃやろうぜ。あ、あとポットも下さーい」
「あいよ」
僕達は駄菓子と、ちっちゃいカップ麺をカゴに入れてお金を払い、奥の座敷に移動した。
「へぇ…店の中で食べられる駄菓子屋さんなんて初めて。前の町にはなかったな」
「そうか? 俺達、こーゆーのしか知らね」
キョロキョロと店内を見回す芦屋クンに、ベビースターのもんじゃを作りながら灯琉は言った。
「みんなぁ、お母さんがおにぎり握ってくれたんだけど、食べるぅ? 全部梅干しだけど」
今ちゃんが10コほどおにぎりを出してくれたので、カップ麺にお湯を注いで待つ間、かぶりついた。梅干しがしょっぱすぎて、みんな涙目になってた。
灯琉お手製のもんじゃは美味かったし、カップ麺をすすってる時にえだっちの眼鏡が曇って、それが妙におかしくてみんなで大笑いした。
「あれれー、なんか賑やかと思ったら。君達、こんなとこでなにやってんの」
知ってる声が飛んで、僕達5人は一斉に店の入り口の方を見た。
僕達の担任の、加藤美代子先生だった。
…