シークレットガイド
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#クツ飛ばし
飛んで行ったボールを追いかけると、ブランコの手前でボールは止まっていた。
「ん…?」
すぐ近くに大きなブナの木があるんだけど、その下で小学1年だか2年だかの、ちっちゃい子達が集まって、上を見上げていた。
「どうした? キミら」
ボールを拾い上げて、ヒロくんが話しかけると、その子達は困った顔をして「あれ」と指差した。
ブランコのクツ飛ばしをやったらしく、建物の2階ぐらいの高さの枝先に、片方のスニーカーが引っ掛かっていた。
ヒロくんがボールを放り投げて、下からスニーカーを当てて落とした。
「おにいさんありがとう!」
その子達はお礼を言って、向こうへ駆けていった。
「懐かしいな、クツ飛ばし。僕達もよく引っ掛けたよね」
「久々に飛ばすか! お前ら位置につけー」
灯琉の号令で、6台並んでいるブランコに僕達5人が座って、残りの1台にはヒロくんが座った。
「オイコラ坂本広史! なんでオメーも入るんだよ」
「まぁまぁ、いいじゃん。俺、けっこう遠くに飛ばすよ?」
「なにっ。負けねー!」
灯琉の闘争心がスタートの合図になって、僕達は一斉にブランコを漕いだ。
かかとを踏み潰した片方のクツを、めいっぱい蹴り上げた。
灯琉とヒロくんのクツが、さっきの子のスニーカーより高い所に引っ掛かって、さっきみたいにボールで落とそうとしたけど、ボールも木に引っ掛かってしまった。
「バッカヤロ。ヘッタクソ。登っていくっきゃねーじゃん」
文句を言いながら、灯琉がスルスルと木を登っていく。
ヒロくんのクツとボールを下へ落として、自分のクツを取って履くと、また上へと登っていってしまった。
「灯琉ー? 降りてこないのー?」
僕が叫ぶと、ずいぶん間があってから、
「おおおー、いい景色ぃ。お前らも来いよー」
灯琉の声が遠く上から降りてきた。
…