シークレットガイド

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 #女子



 トンネルを抜け出して、僕達はまたペダルを漕ぎ出した。

 だんだんと陽が高くなって、ジリジリと路面を照りつける。

 ふと遠くを見ると、サイクリングロードの向こうがゆらゆらと揺れていた。

「半分くらい、来たかな?」

「そうじゃね? この先の公園、寄るだろ?」

「もちろん!」

 ここからはしばらく、平坦な道が続く。アップダウンが終わってほっと一息ついたところで、

「あれー? 真守くん達じゃん」

 サイクリングロードの外側から声が飛んできた。そっちの方を見ると、同じクラスの女子二人。

 僕と同じ級長の智子と、その親友の水島さん。

「げっ! オトコ女!」

「うっさい! 猿顔!」

 灯琉の野次が飛んで、智子が噛みつく。二人は顔を合わせればいつもこんなだ。

「あららぁ、またトモトモコンビが始まったよ」

 えだっちがやれやれと肩をすくめた。灯琉のトモと智子のトモ。いがみ合いが始まるとクラスの皆は必ずそう茶化す。

「今日は、みんなといるんだね?」

 水島さんが僕の傍に来て、話しかけた。

「ウン。ゴメンね、一緒に勉強出来なくて」

「ううん。今日はね、智子と一緒に行くの。真守くんは、みんなと楽しんでね。芦屋クンを案内してあげてね」

「ウン。ありがと」

 水島さんの、肩のラインを超えた後ろ髪が風で揺れた。ちょっと見惚れていると、

「あっ! 真守が水島とヒミツの話してる! やーらしー!」

「なっ。だから、そんなんじゃナイってば! なんなの、灯琉は」

「いーや、オマエここ抜けて水島と図書館行きたいなー? なんてちょっと思っただろ! こっから図書館近いもんなー?」

「チーガーウー! いい加減にしないと怒るよ!?」

 灯琉がうるさいので、灯琉の口端に親指を突っ込んでイーの形にしてやった。

「いひゃひゃ。こんにゃろ」

 灯琉も同じように、僕の口をイーにする。

「はいはい、ブレイクブレイク。ここが揉めるとは思わなかったよ」

 えだっちが僕を、今ちゃんが灯琉を後ろから羽交い締めにして、距離を開けさせた。



 そんなんじゃないんだからね。本当なんだからね。





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