シークレットガイド
14/41ページ
#トンネル
サイクリングロードは、幾つかの大きな道路を横断するように繋がっている。
なので、一定の間隔でトンネルに潜って、その道路の下を通って、坂道を上がって地上に出る。
1個目はラクラク、2個目はちょっと余裕、3個目はハァハァ、4個目以降はゼイゼイ…
なかなか、心臓破りのアップダウン。
「ねえぇ~、少し、お茶を飲ませてえぇ」
今ちゃんが死にそうな声で呼び止める。
「はあぁ? まだ半分の半分も来てねーぞ」
「まぁまぁ…ちょっと日差しが強いからね。水分補給はしとこうよ。
今ちゃん? 次のトンネルん中で休憩ね」
灯琉が先に行きたがるのをなだめて、僕達はひんやりと仄暗いトンネルに身を潜めた。
自転車に跨がりながら、背中のランドセルから水筒を取り出して、ゴクゴクと喉を潤す。
「芦屋クン、大丈夫? キツくない?」
「…っうん、大丈夫…ちょっと疲れるけど…楽しいよ。
うわぁ…風の通り道だね。涼しい」
そう言った芦屋クンの顔は、疲れを掻き消すほどにキラキラと輝いていた。
「なぁ…ここ通る度気になってんだけど」
灯琉の声がトンネルに反響してぐわんと伝う。
「【○○君メイ】ってなんだ??」
灯琉が言ってるのは、トンネルに黒いスプレーで書かれている【○○君命!】というらくがき。僕にもよく分からない。
「あーっそれね。メイじゃなくてイノチ。○○君って○○○○ってアイドルの事さ。ねーちゃんが言ってた」
「僕のお姉ちゃんもねぇ、言ってたよぉ。命付けると好き過ぎるってコトなんだってぇ」
中学生のお姉さんがいるえだっちと今ちゃんが説明してくれた。
あーなるほどねー、と僕と灯琉と芦屋クンはそのらくがきを見ながら頷いた。
「まぎらわしー。俺、呪いの言葉かなんかかと思って、びびっちまったじゃんか」
ガキ大将らしからぬ灯琉の言葉に、僕達の大爆笑がトンネルの中でこだました。
…