空の兄弟〈後編〉
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俺と伯母さんは、三日間竹雄の部屋に滞在した。
この時の竹雄との思い出といえば、竹雄が仕事で使っている輪タクに乗せてもらって、町を一周した事。
春の日射し、そよぐ風、東京の活気溢れる空気がめっちゃ気持ちええ。
それとは対極にえらいヒョロヒョロの竹雄の後ろ姿を眺めて、そんなんでほんまに大丈夫なんか、この兄ちゃんどう見ても力仕事向いてへんのと違ゃうのと
俺と竹雄を繋ぐものは鷹しかなかった。
竹雄が言った、鷹坊はいい子でいたのか、ちゃんと叔母さんの手伝いをしていたのか。
これを聞いたらきっと鷹の奴笑い飛ばすやろな、俺は、はい、僕にもようしてくれましたと答えた。
竹雄は鷹の話をしてくれた。
僕が戦地に行く前のあの子は、ちょうど今の悟くんの背丈と同じくらいだったよ。
ねえ、鷹坊はどれくらい背が伸びていたのかい。
僕の中の鷹はいつまで経っても幼いままのあの子なんだよ。
俺はあいつの背丈があの頃どのくらいのもんなのかなんて、わかるはずがない。
でもあいつは風結子ねえちゃんより少しだけ高いくらいだった、そんな気がする。
同い年の女の子とたいして差ァなかったんちゃいますか、と俺は言った。
そう、と竹雄は頷き、優しく笑んだ。
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