空の兄弟〈後編〉
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鷹のこの異常な冷えが不安からきていることなど、悟は知るはずがない。
すると鷹、にゅうと両腕を伸ばしてきて、悟の小さな頭を自分の胸へ導いた。
悟、これに別に驚きはしない、ただひと言、
「痛いわい、あほ」
悟の呻きを無視し、鷹は悟の後頭部と肩を抱え、更に自分の胸へ押しつける。
──なんて小さな
よくわからないが、鷹はこんな事に震えを感じた。
そして、鷹よりも熱い身体、悟の熱がだんだんこぼれていっているのは、鷹が悟の熱を吸いとってしまっているからか。
「俺は、冷たくなんか、なりたくない…」
悟、鷹にぞくりとさせられたのはこれで二度目、びっくりした拍子にガラ空きの鷹の脇腹に危うく蹴りを入れそうになった。
「空悟、痛い、胸んとこに何か入れてるのか」
ふと鷹の両腕が緩み、悟を軽く突き放す。
悟、ちょっとだけ淋しさを感じたがすぐに忘れ、寝巻きの襟口に手を突っ込んだ。
そこから取り出したのは、首掛けの小っちゃな巾着袋だった。
…