空の兄弟〈後編〉

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 悟はぞくりとした。

 そして、この美しい夕日が、今夜こそあいつに安らかな眠りにつくきっかけになってくれればと、願わずにはいられなかった。

 悟は不意に両目を伏せた。

 お前、お前だけが夜脅えてる思ってんねやろ。

 あほか、お前、俺かて恐いんやで。

 お前が脅えるのを見とうなくて、いっつも耳塞いどる。

 俺も夜に、がったがた震えてんねや!

「帰るか、さあ」

 悟のすぐ横に鷹が飛び降りてきて、悟ははっとした。

「もう、ええねんか」

「何を、そんなにびっくりしているんだ」

「しとらんわい、ぼけ!」

 いつもは悟を見下ろす鷹が、この時はわざわざしゃがんで悟を覗き込んできた。

 悟は急に気恥ずかしくなって、いつもの調子で悪態をついてみせた。

 すると鷹、ふと口元を緩ませて、悟の小さな片手を手に取って歩き出した。

 西の逆光のせいで、鷹の背中が黒ずんでいた。

 鷹の、いつにない仕草に悪寒を感じるよりも先に、悟は家に着くまで何度も何度も心の中で繰り返さずにはいられなかった。

 ──どうかあいつに、安らかな眠りを!





 しかしながら、この日の夜も、次の日の夜も、空の兄弟たちは震え上がり、いつ眠ったのか、どのくらい眠ったのか分からなかった。





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