空の兄弟〈後編〉
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そう叫んだ時には、飛行機は鷹たちの真上を飛んでいた。
恐ろしいくらいに近くを飛んだ。
ゴゴゴと地響きさえ伝わるこの飛行物体に、三人は身体を竦めた。
「逃げろ、逃げるんだ! 早く!!」
やっぱり敵機だった!
ふと裏切られたような気も混じり、鷹は顔を歪めながら叫び、走ろうとした。
お願い、撃たないで。さっきみたいに、どこかに飛んでいってしまえ。
ところが、 飛行機の機関銃はケタケタと笑うように弾を乱射し、
「ぎゃあっ!!」
向こうへ姿を消したはずのリアカーの親父の頭を貫いた。
風結子だけが顔を背けた。
二人の少年の目はその光景をしっかりと映した。
親父はうつ伏せに倒れ、頭から大変な量の鮮血を流した。
飛行機は機関銃を乱射したまま、遠くの山々の方へ飛んでいってしまった。
三人が震えの止まらない足で駆け寄ってみると、親父は死んでいた。
頭に巻いたタオルが真紅に染められ、地面さえも重々しく赤に変わっていた。
風結子は両手で顔を覆い、首を横に振った。
「た
悟が鷹の脚にしがみついてきた。
鷹は脚の震えを止めようと、身体中に力を入れた。
悟に気付かれたくなかった。
…