空の兄弟〈前編〉

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「……」

 鷹が硬直した。抱きついている悟にはよくわかる。

「おねえちゃん言うてたで、楽しみに待ってるって。
 固まっとる場合とちゃうでた、心のこもったお前の麦藁帽子で、おねえちゃん慰めてやれ」

「慰める?」

 悟の最後の言葉が引っ掛かり、鷹は首をかしげた。

「なんでもええから、作れ、ええな。
 俺に感謝せえよ、お前の夢のひとつを叶えるきっかけを作ってやったんやからなあ」

「でも俺は、岡田の頭周りがどんなもんか知らない」

「はっ、そんなん、自分で調べに行けばええやんか。
 た、お前、年上のくせにそんなことも頭に回らんの、あほか」

 結局いつもの口の悪さに戻った悟にだんだん腹が立って、鷹は取っ掴み合いに持ち込んだ。

 やれやれ、とそれを見ながら幸代は肩をすくめて、二人が散らばしたとうもろこしを黙々と拾った。





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