空の兄弟〈前編〉
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「た
鷹がいるはずであるとうもろこし畑へ悟は侵入した。
悟よりもずっと背の高いとうもろこしの枝葉が視界を遮る。
「どうしたんだい、大きい声出して」
右側でがさがさと葉が動き、幸代の顔が現れた。
「伯母さん」
悟は幸代の出現に意表をつかれ、ちょっと声がうまく出なかった。
「鷹ならこっちだよ、おいで」
と悟の手をとって、幸代は鷹のいる所まで連れていってくれた。
鷹は立派に実ったとうもろこしをもいで、籠に入れていた。
「うるせえよ、聞こえてるよ」
悟と幸代が自分のすぐ後ろにいる気配を感じたが、鷹は振り向かないまま言った。
悟は幸代の手を離れ、鷹の背中にひっついて、鷹の腰に両腕を巻きつけた。
「なあ、たぁ
「う、気持ち悪い…」
こういうのを子供の可愛げと言うのだろうけど。
いつも悪態ついてばかりの悟だから、そんな見慣れないことをやられると、鷹には悪寒しか走らない。
「お前お手製のこの帽子、被り心地ええで」
「そりゃどうも…頼むから離れろ、気持ち悪い」
「ほんでなぁ、風結子ねえちゃんの分も作ってほしいねんけど」
…