空の兄弟〈前編〉

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 それから三日くらい経ち、悟は風結子と再会した。

 この日もぎらぎらと暑く馬鹿みたいに晴れた。

 鷹が編んでくれた麦藁帽子を頭に乗せて、悟が熱気の舞い上がる道を散歩していると、

くうちゃん!」

 小川の下手の方から、例の慣れないあだ名を呼ぶ風結子の声がした。

 もんぺの裾を捲り上げた裸足の風結子が、川瀬で佇んで手を振っていた。

「帽子なんて被っているから、ちょっとわからなかったよ!」

「ええやろ! たに作らせたんやで!」

 セミがあんまりやかましいから、自分の声が掻き消されないように、悟が風結子の下に着くまで、悟と風結子は怒鳴り合った。

「青山くんは、一緒じゃないの、今日は!」

「畑仕事やねん、こんな暑い中、ご苦労なこっちゃ!」

「空ちゃん、ここは冷たくて気持ちいいよ、一緒にどう?」

「そうさせてもらうわ」

 悟が板橋の上までやってきたので、二人は怒鳴り合うのをやめた。

 ぴょんと橋から砂利の河川敷へ飛び降り、風結子のかばんが置いてある側に自分の下駄を脱ぎ捨て、悟は風結子の横に並んだ。

 せせらぎが両脚を撫で、それに連れられた夏の冷たい空気が流れ、そして去る。

「ええなあ、これ」

 悟は溜め息混じりで笑んだ。

「空ちゃん、私、今日学校へ行かなかったわ」

 風結子は川の流れの果てに目を向けたまま言った。





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