空の兄弟〈前編〉
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鷹はこの日一番の熱を頬に持つのを感じた。
悟の質問に答えないで、すばやく布団を引っ張って顔を隠す。
布団越しにぼそぼそと何か言っていて、悟がそこへ耳を寄せると「そんなわけない、そんなわけあるか」という鷹の声が聞こえた。
それに続いてまたぼそぼそと言って、それは全く聞き取れなかったので「うん? なんやて?」と悟は聞き返す。
鷹はだんまりを決め込むつもりだったのに、悟がいつまでもユサユサと揺らすので、
「そりゃあ、あの子と話せたら、夢のひとつは叶うことに…」
ついポロリとこぼしてしまって、「何言わせるんだよ!」布団の中で寝返りをうって悟を振り落とした。
転げ落ちた悟はひっくり返ったまま笑いが止まらない、鷹の反応が楽しくて仕方がないのだ。
風結子ねえちゃん、優しかったな。
「た
俺、風結子ねえちゃんええお母ちゃんになる思うし、俺もええ兄ちゃんになったるねんなぁ」
欠伸混じりの、突拍子もない悟の未来予想図は延々と続いたが、鷹がむりやり寝息を立てると、しばらくして悟もすうすうと寝息を立てた。
鷹はほっとして、隣の空いている布団に悟を運んで入れてやった。
…