空の兄弟〈前編〉
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「ぶっ!!」
案の定、鷹は口に含んでいたものを吹き出した。
「ふん、なんややたら無愛想やからおかしい思うたねん。
おねえちゃん言っとったぞ、お前の顔が赤いて。
お前がおねえちゃんを嫁にしたいから、今もそんなに顔が赤いんやろ、え?」
両腕組んで得意の饒舌で悟はそう言った。
悟に言われるまでもなく、自分の両頬が熱いのはわかっている。
自分の真っ赤であろう顔を隠したくて、鷹は両手で頬を覆った。
持っていた飯の茶碗を円卓の上に倒し、中の白米がこぼれた。
「なんちゅう話の展開だ」
幸代をちらと見ると、幸代は冷静の目で、いや、正直に言うとちょっと目を丸くしていた。
それが余計に鷹の羞恥心を掻き立て、腹立たしかった。
「ごちそうさま、もう寝る!」
子供みたいにぷりぷり怒って立ち上がり、鷹は茶の間を出た。
「あ~あ、せっかくの白いごはん、もったいない」
悟は鷹のこぼした白米をひょいとつまんで、小さいおにぎりにして、口へ放り込んだ。
鷹の可愛い一面が見れて嬉しいのか、幸代はくすくす笑い続け、鷹の後片付けを済ませた。
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