空の兄弟〈前編〉
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「学校の帰り、か」
「そうよ。私の家、あそこなの」
女の子は鷹の背後を指差した。
鷹が振り向くと、50mくらい先に家が何軒か建っている。
「早く行かなきゃ氷無くなっちゃうよ、青山くん」
「あ、ああ」
女の子にせっつかれ鷹は走り出したが、途中で振り返り、
「なんであんた、俺の名前を知っているんだ」
と怒鳴った。
「前に学校、見学に来たでしょう。その時に皆が言ってたのよ。
あいつは東京もんの、青山鷹っていう名前らしいって」
と女の子は声を張り上げて返した。
「らしいじゃないよ、そうなんだよ」
鷹はもう一度怒鳴って、それから駆けていった。
「なんやおねえちゃん、あいつと知り合いなんか」
だったらあいつ、なんであんなに愛想悪いねん。
「ねえ、くうちゃん」
「く、くうちゃん?」
突然こっちに振られて、しかも聞き慣れないあだ名で呼ばれたので、悟は戸惑いを隠せなかった。
「青山くん、熱があるんじゃないの」
「へ、なんで」
「顔が赤かったよ。くうちゃんの背丈じゃ見づらいか…」
「どうでもええけどおねえちゃん、くうちゃんはやめれな。女みたいで嫌やわ」
悟は恥ずかしそうに、ふてくされて言った。
…