空の兄弟〈前編〉
65/91ページ
残された清作と易は、この場で鷹と仲直りすることにした。謝ることにした。
「洪ちゃんもさ、きっと俺たちと同じ気持ちでいると思うんだ。
だから、洪ちゃんが自分からそう言ってくるのを待っていてやってよ」
清作は鷹にそう言った。
「そんなもの、一生なさそうだけどな」
鷹はふっと笑った。
「それから、チビ、お前の宝物のこども」
易が申し訳なさそうに悟を見て言った。
「宝物?」
鷹が首を傾げていると、
「ああ…後で話すわ。あれは事故やろ。どうしようもないわい」
と、悟は意外と明るい声で言った。
あの青い宝物を鷹も気に入っていたから、今ここであの時の怒りに任せて失くした経過を話したら、きっと鷹も怒り狂うだろう、折角の仲直りがパアになるだろうと思ったのだ。
「そういえば、チビ、お前の名前何て言うの」
今までそうならなかったのも可変しな話だが、清作はようやく悟の名を訊いた。
「俺か? 俺は空悟や。よう覚えとけよ」
鷹以外の人間に空悟の名を知ってもらえるのがよほど嬉しいのか、名乗った悟の声は弾んでいた。
ところが、
「くうご?」
清作と易はその名に目をまんまるくし、
「ごはんを食うことだべか」
と言うと、鷹はげたげたと品なく笑い、悟は機嫌を損ねた。
…