空の兄弟〈前編〉

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 湯に浸かっている間、悟と幸代は鷹について話をした。

「子供嫌い、子供嫌いて、あいつそんなにひどいの。なぁ伯母さん」

 湯かさが足らず、剥き出しになっている幸代の両肩に湯船の湯をかけてやりながら悟が言う。

「あぁ、ありがとうよ。
 そうねえ、本人がああ言っている限り、やっぱり治ってないんだろうね」

「あいつ、初めて会うた時も言っとったよ、どうせ俺は子供嫌いやねんて。
 昔なんかあったんちゃうの、あいつ、時々俺を見て何とも言えん顔しとるわ」

「そう昔ではないんだけどさ」

 幸代はふうと溜め息をついて、悟の濡れた頭を撫でてから言った。

「あの子はねえ、小さい子らとケンカをしちまったのさ。今から三ヶ月くらい前のことさね」

「それだけ? それだけで嫌いになれるんか。つくづく単純な奴やのう」

 悟が呆れた様にそう言うと、幸代は笑い、でも首を横に振った。

「ところがそのケンカは単純じゃなかったのさ。
 しまいにはケンカ相手の親御さん達をも奮起させたからねえ…」

 幸代がさも淋しそうな顔をする。

 たった一瞬だが幸代にこんな顔をさせた鷹を、悟は憎く思った。





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