空の兄弟〈前編〉
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そしてふいと横下を向いて、
「なんでこんなことまでお前に喋らなあかんねん」
と吐き捨てた。
「知るか。お前が勝手に語るからだろ」
そう言うと鷹は地べたに座って、掴んでいた藁を編み始めた。
「なんや、それ」
「帽子を作るんだ。これから暑くなるからな。麦藁帽子」
「作れるんか」
「ああ」
悟は目を輝かせて、
「なあなあ、俺にも作ってくれや」
と言って、鷹の身体を揺すった。
「ふん、だったら俺のことをお前って呼ぶのをやめろ。
そしたら作ってやってもいい」
藁を編みながら鷹は言った。
「せやけど、俺、お前の名前知らんわ」
「何言ってんだよ、叔母ちゃんがさんざん呼んでるだろ」
「え? タカでええのんか。タカシとかタカユキとかがほんまの名前で、タカはあだ名や思うとった」
悟はどうも素直に物事を受け止めない、ひねくれた性質の持ち主なのだと鷹は確認して、更に溜め息をついた。
…