空の兄弟〈前編〉
26/91ページ
「なんで知ってるのさ、あいつから聞いたのか」
「いいや、あの子は何も言ってないよ。これは私の推測さ」
「じゃあ教えてくれなくていい」
ふいとそっぽを向いて、鷹は下駄を脱ぎ捨てて家に上がった。
「どうしてさ」
鷹の言葉に幸代が首をかしげて尋ねると、鷹は、
「多分俺と同じ推測だと思うぜ」
と、振り向きざまに幸代を指差して言った。
その指を横にのけて、
「ふうん、じゃあお前の推測とやらを聞かせてもらおうじゃないか。
もし同じじゃなかったら、悟くん探しに行ってもらうよ」
じろっと睨んでそう言う幸代に鷹はたじろいたが、意地になって
「あいつの名前が悟で、あいつが空を好きだからだろう?」
どうだ、どこか間違っているかと強気な顔で言ってみせる。
すると幸代は不敵な笑みを浮かべて、鷹の背中を二回程強く叩いた。
「さあ、悟くん探しに行っておいで。あの子はそんな単純じゃないさね」
そして、ひと息おいてこう続けた。
…