空の兄弟〈前編〉

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「なんで知ってるのさ、あいつから聞いたのか」

「いいや、あの子は何も言ってないよ。これは私の推測さ」

「じゃあ教えてくれなくていい」

 ふいとそっぽを向いて、鷹は下駄を脱ぎ捨てて家に上がった。

「どうしてさ」

 鷹の言葉に幸代が首をかしげて尋ねると、鷹は、

「多分俺と同じ推測だと思うぜ」

と、振り向きざまに幸代を指差して言った。

 その指を横にのけて、

「ふうん、じゃあお前の推測とやらを聞かせてもらおうじゃないか。
 もし同じじゃなかったら、悟くん探しに行ってもらうよ」

 じろっと睨んでそう言う幸代に鷹はたじろいたが、意地になって

「あいつの名前が悟で、あいつが空を好きだからだろう?」

 どうだ、どこか間違っているかと強気な顔で言ってみせる。

 すると幸代は不敵な笑みを浮かべて、鷹の背中を二回程強く叩いた。

「さあ、悟くん探しに行っておいで。あの子はそんな単純じゃないさね」

 そして、ひと息おいてこう続けた。





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