空の兄弟〈前編〉

24/91ページ

前へ 次へ


 そうしてしばらく悟に任せたままにした鷹は、

「そういえば、なあ、なんでお前は空悟なんて名前を作ったんだ?」

 夏になりかけの青空をぼんやりと見つめながら、ふと思いついて悟に尋ねた。

 その言葉に悟は手を止めて、鷹と同じ様に空をぼんやり眺めた。

 それからゆっくり鷹の方を向いて、何か言うのか口を開く。

 どんな言葉が出てくるかと思ったら、

「誰がお前なんぞに言うか、ボケ!」

 いーっと両の人差し指で口を横に広げて、悟は鎌を放り投げてどこかへ行ってしまった。

「なんてお天気な野郎だ、ほんとに!」

 とことん口の悪い悟に怒りを通り越して呆れる鷹。

 せめて全部刈ってから去ってくれたらよかったのに、心の中でぶつくさ文句を言いながら、投げ出された鎌を拾って残りの麦を刈り出した。





24/91ページ
スキ