空の兄弟〈前編〉
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そうしてしばらく悟に任せたままにした鷹は、
「そういえば、なあ、なんでお前は空悟なんて名前を作ったんだ?」
夏になりかけの青空をぼんやりと見つめながら、ふと思いついて悟に尋ねた。
その言葉に悟は手を止めて、鷹と同じ様に空をぼんやり眺めた。
それからゆっくり鷹の方を向いて、何か言うのか口を開く。
どんな言葉が出てくるかと思ったら、
「誰がお前なんぞに言うか、ボケ!」
いーっと両の人差し指で口を横に広げて、悟は鎌を放り投げてどこかへ行ってしまった。
「なんてお天気な野郎だ、ほんとに!」
とことん口の悪い悟に怒りを通り越して呆れる鷹。
せめて全部刈ってから去ってくれたらよかったのに、心の中でぶつくさ文句を言いながら、投げ出された鎌を拾って残りの麦を刈り出した。
…