空の兄弟〈前編〉

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 おにぎりもお茶もなくなって、食休みも十分にとった。

 悟がすうすうと寝息を立てる横で鷹は立ち上がって、いくつか畑のある中の、黄金に実った麦の敷地を眺めた。

「叔母ちゃん、もう収穫してもいいだろう?」

「そうね、お願いするわ。今晩は麦飯にしようかねぇ」

 鎌を手に取って鷹が麦畑へ行こうとした時、悟はぱちっと目を開けて上半身を起こした。

「おや、もういいのかい」

 幸代の問いかけに、悟は目を擦りながらこくんと頷いた。

 そして、木の幹からすたんと両足をしっかり地につけて降りた拍子に、悟のシャツの中に入れてあった首飾りの指輪が顔を出した。

「あれ? その指輪…」

 見覚えがあるのか、幸代がそうつぶやいた。

 悟は慌てて首飾りを再びシャツの中にしまい、鷹の方を向いて、

「お前にはやらへんぞ」

 そう吐き捨てて、顔を洗いに水道ポンプの所まですたすた歩いていった。

「なんで俺に言うんだよ」

 悟の理不尽な言動に腹を立てる鷹に、幸代は、

「そりゃあ、お前が欲しそうな顔をしたからさ」

と言って、くすくすと笑った。





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