【シークレットガイド】のオマケ書き

【シークレットガイド】バイク兄ひとりver.


(※公募用に改稿したページになります)


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「おにーさん、誰かの応援?」

「わかった! カノジョだ?」

 僕達の冷やかしに、はっはっはと乾いた笑いをして、お兄さんはふと遠くを見やって言った。

「チガウチガウ。女の子だけど、マブダチ。
 …一番近いトコにいるのは確かだけど。
 剣道やっててさ、チョー強ぇの」

「片想いなんだ?」

「告白しないんだ?」

「いくじなしなんだぁ」

「キミ達…容赦ないね」

 僕達、いや正確には灯琉とえだっちと今ちゃんが、やいのやいのと囃し立てるから、お兄さんはグシャグシャに僕達の頭を撫で回した。

 僕と芦屋クンは何も言ってないのに、とんだとばっちり。

「…どうなんだろうな? 距離が近過ぎてよく分からんのよ…
 オレがアイツを…うーん…」

 独り言のように言うから、なんて返せばいいか分からず、僕達は顔を見合わせた。

「キミ達は…誰かを好き? カノジョとかいたりすんの?」

 物憂げな表情から一転、ニヤリと笑みを浮かべてお兄さんは聞いてきた。

「いるいる! コイツねコイツ」

「休みの日にね、図書館デートなんかしちゃったりしてんの」

「ひゃあぁ、ドキドキぃ~」

「なっ。見ず知らずの人にナニぶっちゃけてんのさ!
 だいたいね、そんなんじゃないんだから!」

 いじりの対象が何故か僕に刷り変わると、

「ほほーっ、それはそれは。青春だねぇ~」

 お兄さんも一緒になって僕を茶化した。心なしかホッとしたような顔してる。

 かと思えば、自分の腕時計を見てギョッとして、

「…いけね! もうこんな時間だ。まじめに大会が終わっちまうわ。
 そんじゃ、ま、ありがとな! キミ達の出発のジャマしちゃってゴメンな!」

 僕達の並んだ自転車を視界に入れながら、お兄さんは慌てて土手を駆け降りてバイクに跨がった。

「剣道のカノジョさんに、頑張って下さいって伝えて下さーい」

「告白しろーっ」

「当たって砕けろーっ」

「ふられてもぉ、なんとかなるよぉ~」

 僕のまともな見送りに灯琉達のガヤが重なってしっちゃかめっちゃか。

 お兄さんは軽くずっこけた後、ヘルメットを被って僕達に軽く手を上げると、ブオンとひとつ大きな音を立てて走り去っていった。

 コロコロと表情が変わる、面白いお兄さんだった。





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