traverse
136/168ページ
え…
え…?
「…えええっ??」
耳を疑った。
タツミくんが、私を…好き?
「はあー…やっと言えたぁ…」
せっかく落ち着いていた心臓がまた暴れ出して、パニックになっている私をよそに、のんびりそんな事を言っている、タツミくん。
「え…あの…
…いつから?」
バクバク言っている心臓に、落ち着いてと必死に唱えて…ウロウロと視線をさ迷わせながら…タツミくんに聞いてみる。
「んー?
…いつからだろ。
はじめはね、面白いのがいるなーって思ったの(笑)
ラーメンの匂い残してくし。ピザトースト加えてキョトンとするし。初めて話した時は、よく噛みついてたよね(笑)
くるくる表情が変わって、見てて飽きなかった。
話さなくていい事、何でも話すし。とにかく馬鹿正直だなって(笑)
いつも元気で明るいイッサ…
時々チョーカッコ悪いイッサ…
色んなイッサを見てきて…
…いつの間にか、好きだった。
…って、ちょっと。なんで耳塞いでるのよ(笑)」
途中から、塞ぐっていうか、軽く指を折り曲げた手で両耳を覆っていた私。
…大丈夫だよ。聞こえてるよ。
「だっ…だって…
…聞いてて…
…はずかしい…」
私、今、どんな顔してる? 頬が燃えてる。誰か氷持ってきて。
「…うん…
…俺も…
…言っててはずかしいんですけど…」
タツミくんの言葉に、思わず吹き出してしまった。チラッとタツミくんを見ると、真っ赤な顔して、不服そうに口を尖らせていた。
「ていうか…ねぇ…手ぇ下ろしてよ…」
また、タツミくんの手が伸びかけて…また、寸での所で止まる。
「え…ちょっ…なんなの、さっきから…っていうか、こないだから…その手は…?」
さすがに怪しく思って、タツミくんを問い詰める。
「え? あー…だって、イッサ、触られるの、イヤなんでしょ? やたらビクつくから…」
あ…いや…それは…
タツミくんに触れられたら、ドクドクうるさいから…
でも…今なら…耐えられそう…
「別に…大丈夫だけど…?」
「あ…そう? じゃ…遠慮なく…」
タツミくんの手が再び伸びてきて…私の両手を耳から剥がした。そしてそのままその高さで、優しく握られた。
タツミくんが近い。タツミくんの息がかかる。
「イサミ」
イッサじゃない、イサミ、だ。
「返事…ちょうだい? 」
タツミくんの掠れ声に、フタをしていた感情が一気に溢れ出した。
私。
私。
そうやって言われる前から。
「…私も…
…好き…だよぉ…
…うわぁん…!」
「…泣き虫…」
そんな風に泣きじゃくる私を見て、タツミくんはホッとしたように、そして、いとおしそうに、笑った。
※よければこちらもどうぞ
→【traverse】中間雑談・11
…