traverse

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 え…

 え…?

「…えええっ??」

 耳を疑った。

 タツミくんが、私を…好き?

「はあー…やっと言えたぁ…」

 せっかく落ち着いていた心臓がまた暴れ出して、パニックになっている私をよそに、のんびりそんな事を言っている、タツミくん。

「え…あの…
 …いつから?」

 バクバク言っている心臓に、落ち着いてと必死に唱えて…ウロウロと視線をさ迷わせながら…タツミくんに聞いてみる。

「んー?
 …いつからだろ。

 はじめはね、面白いのがいるなーって思ったの(笑)
 ラーメンの匂い残してくし。ピザトースト加えてキョトンとするし。初めて話した時は、よく噛みついてたよね(笑)

 くるくる表情が変わって、見てて飽きなかった。
 話さなくていい事、何でも話すし。とにかく馬鹿正直だなって(笑)

 いつも元気で明るいイッサ…
 時々チョーカッコ悪いイッサ…
 色んなイッサを見てきて…



 …いつの間にか、好きだった。



 …って、ちょっと。なんで耳塞いでるのよ(笑)」

 途中から、塞ぐっていうか、軽く指を折り曲げた手で両耳を覆っていた私。

 …大丈夫だよ。聞こえてるよ。

「だっ…だって…
 …聞いてて…
 …はずかしい…」

 私、今、どんな顔してる? 頬が燃えてる。誰か氷持ってきて。

「…うん…
 …俺も…
 …言っててはずかしいんですけど…」

 タツミくんの言葉に、思わず吹き出してしまった。チラッとタツミくんを見ると、真っ赤な顔して、不服そうに口を尖らせていた。

「ていうか…ねぇ…手ぇ下ろしてよ…」

 また、タツミくんの手が伸びかけて…また、寸での所で止まる。

「え…ちょっ…なんなの、さっきから…っていうか、こないだから…その手は…?」

 さすがに怪しく思って、タツミくんを問い詰める。

「え? あー…だって、イッサ、触られるの、イヤなんでしょ? やたらビクつくから…」

 あ…いや…それは…

 タツミくんに触れられたら、ドクドクうるさいから…

 でも…今なら…耐えられそう…

「別に…大丈夫だけど…?」

「あ…そう? じゃ…遠慮なく…」

 タツミくんの手が再び伸びてきて…私の両手を耳から剥がした。そしてそのままその高さで、優しく握られた。

 タツミくんが近い。タツミくんの息がかかる。

「イサミ」

 イッサじゃない、イサミ、だ。

「返事…ちょうだい? 」

 タツミくんの掠れ声に、フタをしていた感情が一気に溢れ出した。

 私。

 私。

 そうやって言われる前から。



「…私も…



 …好き…だよぉ…



 …うわぁん…!」



「…泣き虫…」



 そんな風に泣きじゃくる私を見て、タツミくんはホッとしたように、そして、いとおしそうに、笑った。





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