悠の詩〈第3章〉

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 樹深の懐中電灯(イッサの夜散歩用)を頼りに暗がりの中を五人で歩いていくと、次第に街灯とすれ違う人の数が増えてきた。

「結構出てきてるね?」

「さすがにここまで来ればね」

 そして商店街のゲートを境にまるで世界が違う、喧騒と屋台からの匂いに包まれた俺達はすっかり舞い上がった。

 営業時間外のシャッターの閉まった店舗の前で、二十を超える屋台が隙間無く並ぶさまは圧巻、その間を人の波が行ったり来たり。

 市街地の繁華駅の混み具合いもちょうどこんな感じ、俺達の町でも起こり得るとはこの時まで知らなかった。

「ふっはは、何で皆家にいないんだよ(笑)」

「ほんとにねぇ、って俺らもだけどさ(笑)」

「さあ、これからどうする? おまいりは年明けてからだよね…今まだ22時半過ぎたとこだよ」

 丸山が自分の腕時計を見ながら俺達に問う。

「でもほら、階段の所もうあんなに並んでる」

 由野の視線を辿ると、商店街の終点と山の上の鳥居を繋ぐ長い石段を人影が埋めていた。

 鳥居の先から動く様子が無いのは、午前0時になるのを待っているからだろう。

「あらら…俺達も並んだ方がいい感じ?」

 そうかもな、樹深の問いにそう答えようとしたところへ、「いや、ちょっと待ってよ」割り込みが入った。

「そもそもどういう段取りだったか知らないけど。今ちゃんと練り直した方がよさそうだよ」

 急にハキハキと喋りだした柏木を皆がびっくりして注目する。

 一瞬ひるんだ様に見えたが、柏木は構わず指揮を取った。

「今晩のメインはお詣り、天体観測、初日の出」

 屋台のごはんもね、由野がこっそり言ったのもちゃんと拾った柏木はクスリと笑い、続けた。

「お詣りはいつでもいいと思うよ、もっと空いた時にさっと行けば。年明け直後にどうしても、なら、あの列に並ばないとだけど」

 どうしてもでは、ないよなあ、俺達は顔を見合わせて気持ちを確認し合う。が、俺ははたと思い出して、

「あっ、俺かあちゃんに御札諸々頼まれてるんだった。あんまり後回しだと忘れそうでこえぇ」

「俺も家から頼まれてる。同じく、忘れそうで怖いんだけど」

 俺の言葉に樹深が便乗するもんだから、お前もかよと軽く肩で肩を小突いた。

 「さすが幼馴染みコンビ、合わせてくるね」柏木が珍しく煽るから、笑いを噛み殺すにとどめていた由野と丸山も派手に吹き出した。





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