悠の詩〈第3章〉

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「あっそうだよね、電話出るのにも時間かかってごめんね。
 うちのお母さん買い出しに出てて、私達それぞれ自分の部屋の大掃除してたの。
 電話鳴って、どっちが出るかで揉めて…」

 ほんとごめん、春海くんにナニ話してんだろう、呆れと申し訳無さの入り混じった由野の言葉に、俺は肩を揺らすばかり。

 俺ひとりっ子だから、時々きょうだいいるヤツを羨ましく思う。

「ははは。まぁいいんじゃねえの。
 そうだ、電話掛けたのは樹深から…」

「あっもしかして、大晦日の事?」

 俺が言いかけたのを、由野がすぐに反応して拾った。

「おう。俺も、あと丸山もオーケーだから。由野に伝えてくれとさ」

「うん、その連絡を待ってたの。よかった、ありがとう。
 また妙な企画立てちゃってごめんね…って、今回は後藤君が発起人だった(笑)
 大晦日だし、家族でゆっくりしたいかなとも思ったんだけど…」

 前回の夏の時はよかったばっかりだったけど、今回はごめんばっかだな由野。

「気にしないでいいぞー。夜から仲間で出掛けるなんてさ、ワクワクするしかないじゃん。
 あ、お前らの課題もちゃんと付き合うから。俺目ぇいいから、チャチャッと星座見つけてやるよ」

 あっはっはと由野は声を上げて、「春海くん星座分かるの?」って珍しくからかってくるから、「なにおう」と凄んでみせても、由野はカラカラと笑うばかりだった。

「あーおもしろ。うんわかった、じゃあお願いするね。晴れて、いっぱい星が見れるといいね。
 あっそうだ、待ち合わせ時間とか場所とか、後藤君ちゃんと伝えてくれてる?」

 そういや樹深、その辺何も言ってなかったな。

「いや、なーんにも。ウッカリものだなアイツ(笑)」

 家族に連れ回されて忙しそうだったしな、一応フォローも入れておく。

 そうだよね、今みんな忙しいよね、由野は相槌を打ってから俺に説明した流れは、こんな感じだった。

 22時に学校の正門で待ち合わせ。

 ○○○山の展望台で天体観測するつもりだが、柏木が場所を分かっていないから、俺達で学校から連れていこうという。

 ○○○山の麓には○○○観音が、更にその下に○○○商店街が、大通りまで長く伸びていく。

 商店街には屋台が沢山並ぶ。色々目移りして、買い食いもするだろうし、そのまま新年を迎えそうだ。

 そしたら観音様に御参りして、おみくじなんかも引いたりして、それから展望台に上ろう。

 ふはは、やっぱり楽しいしか無さそうだ。あるだけのおこづかい持っていかなきゃな。





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