悠の詩〈第3章〉
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そしてまた考え込むように
「本当は、何も言わないで離れるつもりだったけど…
今こうして言葉にしてみたら考えが変わった。千咲ちゃんに正直に話して、きっちり離れるよ」
俺と樹深は無意識に顔を見合わせた。余計に拗れるのでは? とお互いに思ったはず。
でもそんな事は今の由野に言う事じゃない、必要のない事だろう。
「まあ、いいんじゃねえの? 由野の思う通りにすれば。自分の友達は自分で選ぶもんだろ。
がんばれよ、健闘を祈る」
最後の方はおどけて敬礼のポーズを取った。それに並んで樹深も敬礼を、やたら畏まってやったので、由野はゲラゲラと笑った。
「やあだ、もう、おなかいたい(笑)
色々ありがとう、じゃあね、また明日!」
目尻を擦りながら、由野は俺達と別れた。
由野の背中を見送りながら俺達はしばらく立ち尽くしていたが、
「前に春海ちゃんが言ってたの、理解出来た気がする」
と樹深が言ったのをきっかけに、再び歩き出した。
「うん? なんか言ったっけ、俺」
「男は気楽よなって話(笑)」
「あー…アレか(笑)」
「由野さん、無事に終われるといいね」
「まあ…大丈夫だろ由野なら」
引き締まった顔を見せたんだから、大丈夫。根拠なく俺は思った。
それからどうなったか、由野からは何も聞かされなかったが、野上さんとやらが俺達の教室に来る事はもう二度と無かったし、以前の調子で由野と柏木が交流するのを見れるようになったから、話はついたんだろう。
柏木の占いが中途半端に終わった事や、由野が占って欲しかった事が何だったのか、ちょっと気になりもしたけど、どうにもならないや。
ともかく冬休みを跨ぐような事態にならずに済んでよかったんじゃねえかな、なんて自分自身は関係ないんだけど、何でだかほっとした俺だった。
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