悠の詩〈第3章〉

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「へえぇ、占い」

 感嘆の声を上げてみたものの、俺自身は占いに信頼を寄せるたちではない。よく観る朝のニュース番組の中で占いのコーナーがあるけれど、参考程度に聞き流すくらい。

 でも、このタロットっていうカードを使った方法に興味を持った。どんな風にやるんだろう。

「お前は何を聞いたワケ?」

 樹深に話を振ると、「姉ちゃんの恋愛の行方」なんて言う。なんじゃそりゃ、と呆れた声を出すよりも先に、

「全然本人に絡まない占いなんて無理。私情に振り回されて結果が滅茶苦茶に出ちゃうんだから」

 野上さんとやらが不機嫌な声と一緒に鋭い視線も飛ばした。

 ごめんごめん、と肩をすくめる樹深にはそれは届いてなさそうだったが、代わりに俺にぶっ刺さりっぱなしの気がする。

 どうも既視感あるな…と思ったらアレだ、柏木の冷酷なアレ。よく似てる。

 ちらっと柏木を見ると、由野と一緒に占いの本を眺めてああだこうだと言い合っていた。俺には絶対見せない穏やかな顔をしやがる。

 とそこへ、「ごめんそれ使うから」と野上さんとやらは由野の手から本を取り上げた…と乱暴な言い方になってしまったが、実際そう見えた。

 「見させて貰ってた、勝手にごめんね」由野と柏木の謝罪にうんともすんともしないで、取り上げた本を膝の上に置いて俺をじろりと睨んだ…どうしても乱暴な言い方になってしまうな。野上さんとやらにいい印象を持つのは難しい。

「ほら春海ちゃん、何を占ってもらうの?」

 言わないと始まんないんだから、と樹深にせっつかれて、うーんと考える。なんかあるかな。

「…あっそうだ、ちょっと先の話なんだけど、来年度野球部に新入生がどっさり入ってくれるか知りたい、ってのでもいい?」

 先日3年生の先輩達が引退して、少し活気の減った俺達野球部の未来がどんなもんか、当たる当たらないは置いといて、聞いてみたいと思った。

 「別に大丈夫だけど」カードを両手で混ぜながら野上さんとやらは言った。しばらく混ぜていて、その手が止まると、

「はい、今度はあなたが混ぜて下さい。時計回りに、今言った占いたい事を頭の中で何回も繰り返して、自分のタイミングで止めて下さい」

 散らばったカードを俺側に寄せた。





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