悠の詩〈第3章〉
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「なあ、やっぱりもう少し場所取らせてくれよ。楽器同士ぶつからないかヒヤヒヤするし、演奏者が重なってると見栄えよくないんじゃないか」
コタ先生のもっともな抗議のおかげで、はじめステージの
「俺らがメインなのに」舌打ちと共に主人公役の副会長のそんな文句が聞こえた。
でもその声はとても小さくて、生徒会長も先生の意見に同調してたから、逆らえないんだなと思ったら吹き出してしまいそうになる。
ふと見ると、「いい感じのバランスでーす」高浪が体育館の一番後ろのスポットライトから、両腕で大きくOKサインを出していた。あいつあんな目立つのに、こっちじゃ裏方なのか。
「さぁもういいかな、この後もやる事沢山なんだ。申し訳ないけど、この一度きりで明日に備えて。
じゃあ、君達が店主に頼み込む所から…よーい、ハイッ」
そう言うと生徒会長はさっとステージから降りた。
いきなり俺達から?? あっけに取られている所へ、店主役の書記の先輩が来た。
「向こうで主人公達が会話するから、身ぶり手振りで僕に頼み込むような演技をして。僕もそれに合わせて適当に動くから」
柔らかくヒソヒソと言った書記先輩は、一歩下がると腕組みをして俺達をジロジロと眺める演技を始めた。
「柳内、お前の動きに合わせるから、頼むな」
後ろからコタ先生が俺の肩を軽く押して、恒例の小汚ないウィンクを寄越してきたから、しゃあねぇなと腹を括って、樹深のギターを借りて掲げてみたり両手を擦り合わせたりした。
樹深と先生はペコペコと頭を下げてるだけ。俺だけ滑稽に見えてないだろうな?(苦笑)
書記先輩は顎に手を宛がいながらうんうんと頷いて、主人公達の方へ歩み寄りながら、「今から一曲始まります、旅の音楽隊だそうで。よかったら聴いてやって下さい」と言った。
すると、主人公達側が暗転して、あらゆる方向の光が俺達に当てられた。
目が眩む、ふと、演劇中の
「柳内、今だぞ」
また後ろからコタ先生にコソッと言われて、いつの間にか後方に用意された電子ドラムへ慌てて走った。
樹深と先生はとっくにギターを構えてて、俺からの合図を待っていた。
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