悠の詩〈第2章〉
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今度こそ電話を切った後すぐに、「ごはんできたよ」とダイニングからかあちゃんの声が飛んだので、そのまま席へ移動した。
「ねえねえ、何の話だったの~」
食事が半分ほど進んだところで、ダイニングテーブルの下でつま先で俺の脛をツンツンと小突くかあちゃん。小学生か。
「今度の木曜にみんなでボーリング行こうってさ。この前の登校日の時に、そんな話になったらしい」
「あぁそっか、あんたお休みだったもんね。ボーリングって、いつも行ってるあそこ?」
「うん。そうだってよ」
いいわねー、最近行ってないわねー、あたしもおとうさんと行ってこようかしらなんて、俺を数に入れない気でいる言い方をする(呆)
そういや家族で最後に行ったのは、入学式の前の春休みだっけ。俺が野球部に入ってからは家族との休みが合わなくなって、揃って出掛ける事が極端に少なくなったな。
そんな事をぼんやり考えていると、アッとかあちゃんが声を上げた。
「春海、スコアの付け方分かってる? あそこ未だに手書きでしょ」
「げっ。そういやそうだった」
他のボーリング場はオート仕様なのに、そこだけ断固として手書きのスコア表のまま。まぁ、だから他所より料金が安いのかも。
「スペアとかストライクとか…分かってないとカッコ悪~って言われちゃうよ(笑)」
そんな風にからかうヤツなんていない、って思ったけど、ふと柏木の顔が浮かぶ。
アイツなら何て言うだろ、あーそう知らないんだ、うん、言いそう。興味無さげに視線を遠くへ飛ばしてさ、うん、きっとそうだ。
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