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ふたりごと
眠たくもなく、夜でもないのに布団でぬくぬくしているとき、最高に贅沢な時間を過ごしている気分になる。
「オレ、今サイコーに幸せかも」
やわらかな毛布に包まれながら、私と向かい合わせに横たわった彼がふにゃりと笑う。明るい色の髪がシーツに流れて、その繊細な糸みたいな束が、午後の陽をやさしく反射させる。
「外に出かけるのも楽しいけど、たまにはこうしてだらだら過ごすのもいいよね」
今日は何も予定のない、何をしてもいいゆるい一日。いつもより長く枕に寄り添って、朝とも昼とも言えない微妙な時間にご飯を食べて。他のことなんて一切気にせず、好きなだけゲームをしたり、動画を観たり。ちょっと目が疲れたら、じゃあまたお布団に入っちゃおう、なんて魅力的な誘惑に乗ったりして。
だって、ここには堅苦しいことを言う大人なんていない。私たちだけの、自由な場所だから。
「そういえば、お兄さんとは連絡ついた?」
「ううん、まだダメっぽい」
「……そっか」
私の問いかけに、彼は軽く息を吐きながら目を伏せた。
少し前から、彼のお兄さんは姿を消しているらしい。以前はよく私の前でも楽しそうに話をしていたけれど、最近はそんな気配もない。
どこかに行ってしまったのか、ただ隠れているだけなのか。いつか、三人で話をしてみたいと思っているのに。
「名前はいつでもオレのそばにいてね」
毛布の中で、繋いだ手をぎゅっと握られる。応えるように握り返せば、彼の不安げな瞳がふるふると揺れた。
「こっちのセリフ。誰かさんみたいに黙っていなくならないでよ?」
「それって岩さんのこと? ……ならないよ。約束する」
「……ん」
「オレ、頑張るから。ちゃんと病院も行くし」
「うん」
「いっぱい働いて、お金も稼ぐ!」
「無理はしないでね」
「ショーにももっとたくさん出るから! めちゃくちゃカッコイイ役で!」
「楽しみにしてる」
「だから、だからさ……名前、」
「うん。大丈夫だよ。……大丈夫」
太陽の光が遮られ、彼の髪色に陰がかかる。毛布に温められていたはずの両手は、わずかにその温度を下げていた。
「……ねぇ。もっといろんなこと、話そ」
不安なのは私も一緒だ。目の前にいると思っていても、気づかないうちにいなくなっていることもある。
自分が大切に思っているその人は、自分が今まで接してきたその人で合っているのか。その人と接している今の自分は、本当にそれまでの自分と同じなのか。
他人のことですらこんなに不安になるというのに、それが自分のこととなったら、なおさらその気持ちは計り知れない。
「うん。オレも、名前といっぱいおしゃべりしたい」
また、彼の明るい髪が輝いた。
見えないほど眩しいと、私も困る。
だから、いつでも聞こえる場所にいて。
あなたがあなたであるとわかるように。
私が私であると、確信できるように。
その声で、その明るさで、伝えてほしい。
「あ、オレちょっとお腹すいてきたかも」
「え、わかる」
温もりが育った幸せの中、控えめに交わされる小さな小さなふたりごと。
「もうすぐ15時か……。ちょうどいい時間だし、お菓子でも食べちゃう?」
「いいじゃん! 食べよ食べよ!」
勢いよく捲られた毛布から、やさしくあたためられた空気があふれ出る。
放たれて自由になったその空気は、きっとこのあと、チョコレートみたいに甘くなるのだろう。サイダーやコーラみたいにパチパチ弾けて、ポテチみたいにしょっぱくなって。それからまた、マシュマロみたいにふわふわになるのかもしれないね。
そんなサイコーに贅沢な時間を、今からふたりだけで味わっちゃおうか。
眠たくもなく、夜でもないのに布団でぬくぬくしているとき、最高に贅沢な時間を過ごしている気分になる。
「オレ、今サイコーに幸せかも」
やわらかな毛布に包まれながら、私と向かい合わせに横たわった彼がふにゃりと笑う。明るい色の髪がシーツに流れて、その繊細な糸みたいな束が、午後の陽をやさしく反射させる。
「外に出かけるのも楽しいけど、たまにはこうしてだらだら過ごすのもいいよね」
今日は何も予定のない、何をしてもいいゆるい一日。いつもより長く枕に寄り添って、朝とも昼とも言えない微妙な時間にご飯を食べて。他のことなんて一切気にせず、好きなだけゲームをしたり、動画を観たり。ちょっと目が疲れたら、じゃあまたお布団に入っちゃおう、なんて魅力的な誘惑に乗ったりして。
だって、ここには堅苦しいことを言う大人なんていない。私たちだけの、自由な場所だから。
「そういえば、お兄さんとは連絡ついた?」
「ううん、まだダメっぽい」
「……そっか」
私の問いかけに、彼は軽く息を吐きながら目を伏せた。
少し前から、彼のお兄さんは姿を消しているらしい。以前はよく私の前でも楽しそうに話をしていたけれど、最近はそんな気配もない。
どこかに行ってしまったのか、ただ隠れているだけなのか。いつか、三人で話をしてみたいと思っているのに。
「名前はいつでもオレのそばにいてね」
毛布の中で、繋いだ手をぎゅっと握られる。応えるように握り返せば、彼の不安げな瞳がふるふると揺れた。
「こっちのセリフ。誰かさんみたいに黙っていなくならないでよ?」
「それって岩さんのこと? ……ならないよ。約束する」
「……ん」
「オレ、頑張るから。ちゃんと病院も行くし」
「うん」
「いっぱい働いて、お金も稼ぐ!」
「無理はしないでね」
「ショーにももっとたくさん出るから! めちゃくちゃカッコイイ役で!」
「楽しみにしてる」
「だから、だからさ……名前、」
「うん。大丈夫だよ。……大丈夫」
太陽の光が遮られ、彼の髪色に陰がかかる。毛布に温められていたはずの両手は、わずかにその温度を下げていた。
「……ねぇ。もっといろんなこと、話そ」
不安なのは私も一緒だ。目の前にいると思っていても、気づかないうちにいなくなっていることもある。
自分が大切に思っているその人は、自分が今まで接してきたその人で合っているのか。その人と接している今の自分は、本当にそれまでの自分と同じなのか。
他人のことですらこんなに不安になるというのに、それが自分のこととなったら、なおさらその気持ちは計り知れない。
「うん。オレも、名前といっぱいおしゃべりしたい」
また、彼の明るい髪が輝いた。
見えないほど眩しいと、私も困る。
だから、いつでも聞こえる場所にいて。
あなたがあなたであるとわかるように。
私が私であると、確信できるように。
その声で、その明るさで、伝えてほしい。
「あ、オレちょっとお腹すいてきたかも」
「え、わかる」
温もりが育った幸せの中、控えめに交わされる小さな小さなふたりごと。
「もうすぐ15時か……。ちょうどいい時間だし、お菓子でも食べちゃう?」
「いいじゃん! 食べよ食べよ!」
勢いよく捲られた毛布から、やさしくあたためられた空気があふれ出る。
放たれて自由になったその空気は、きっとこのあと、チョコレートみたいに甘くなるのだろう。サイダーやコーラみたいにパチパチ弾けて、ポテチみたいにしょっぱくなって。それからまた、マシュマロみたいにふわふわになるのかもしれないね。
そんなサイコーに贅沢な時間を、今からふたりだけで味わっちゃおうか。
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