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窓を打つ水滴
雨は嫌いじゃない。
ザアザア降っているのはあまり好きではないけれど、しとしとと静かに雫が落ちるのは、耳や心が癒されるからとても好き。
パラパラと木の葉が音を奏でるのは、楽しいけれど特に好きでも嫌いでもない。
サァァと微風にさえ進行方向を変えられてしまう霧雨は、傘を差していても服や肌にひっついてくるからちょっと不快。
ザアザアよりも激しい、窓をバチバチ叩くくらいの強さになると、むしろ面白そうだと外に出てみたくなる。
「嬉しそうッスね」
ホースの水を打ちつけられているような、次々と模様が変わるモザイクがかかるガラス窓に、私の気持ちを代弁した彼の声が跳ね返った。
「外、出ていいかなぁ」
「自分的には、やめといてくれると助かるッス」
薄暗い灰色の空。その動く絵画が佇む下に、私は先程からじっと座り込んでいる。
「風邪引いちゃうじゃないスか」
「うん。移したら大変だもんね。舞台に立てなくなっちゃう。モクレンさんにも怒られちゃうし」
「それもそうッスけど……」
背中が温もりに覆われて、彼が私を包み込むように座ったのがわかる。何かを言いかけていたから真面目に聞こうと振り向けば、前に回された手に顎を持ち上げられ、そのまま唇を塞がれた。
「……こういうこと、できなくなってもいいんスか?」
「ふふ、それは困りますね」
慣れないキスのしかたに、ちょっとだけ照れくさくなる。それから、ものすごく幸せで、胸の中をくすぐられるような気持ちが込み上げた。
「キスできなくなるのは嫌だから、外に出るの、やめとくね」
そう宣言しながら、私はもう一回、とねだるように顎を上げる。
こんな角度から見る彼も素敵。前髪の奥に見える瞳が麗しくて、きれいな夜の雨粒みたいに澄んでいる。
「そうやってすぐ甘え上手になるんスから〜」
も〜、なんて困ったような声を出しつつ、彼はもう一度、きちんとやさしいキスをくれる。激しい雨音なんて消え失せて、秒針の音すら聞こえてきそうな穏やかな心地に満たされた。
「このあと、また晴れるのかな」
「そうッスね……たぶん晴れると思うッス」
少しだけ弱くなった雨の音を聞きながら、彼の鎖骨あたりに頭を預ける。
窓の向こうは相変わらず灰色だけれど、そんな空の色も、私はきれいだと思うんだ。
雨は嫌いじゃない。
ザアザア降っているのはあまり好きではないけれど、しとしとと静かに雫が落ちるのは、耳や心が癒されるからとても好き。
パラパラと木の葉が音を奏でるのは、楽しいけれど特に好きでも嫌いでもない。
サァァと微風にさえ進行方向を変えられてしまう霧雨は、傘を差していても服や肌にひっついてくるからちょっと不快。
ザアザアよりも激しい、窓をバチバチ叩くくらいの強さになると、むしろ面白そうだと外に出てみたくなる。
「嬉しそうッスね」
ホースの水を打ちつけられているような、次々と模様が変わるモザイクがかかるガラス窓に、私の気持ちを代弁した彼の声が跳ね返った。
「外、出ていいかなぁ」
「自分的には、やめといてくれると助かるッス」
薄暗い灰色の空。その動く絵画が佇む下に、私は先程からじっと座り込んでいる。
「風邪引いちゃうじゃないスか」
「うん。移したら大変だもんね。舞台に立てなくなっちゃう。モクレンさんにも怒られちゃうし」
「それもそうッスけど……」
背中が温もりに覆われて、彼が私を包み込むように座ったのがわかる。何かを言いかけていたから真面目に聞こうと振り向けば、前に回された手に顎を持ち上げられ、そのまま唇を塞がれた。
「……こういうこと、できなくなってもいいんスか?」
「ふふ、それは困りますね」
慣れないキスのしかたに、ちょっとだけ照れくさくなる。それから、ものすごく幸せで、胸の中をくすぐられるような気持ちが込み上げた。
「キスできなくなるのは嫌だから、外に出るの、やめとくね」
そう宣言しながら、私はもう一回、とねだるように顎を上げる。
こんな角度から見る彼も素敵。前髪の奥に見える瞳が麗しくて、きれいな夜の雨粒みたいに澄んでいる。
「そうやってすぐ甘え上手になるんスから〜」
も〜、なんて困ったような声を出しつつ、彼はもう一度、きちんとやさしいキスをくれる。激しい雨音なんて消え失せて、秒針の音すら聞こえてきそうな穏やかな心地に満たされた。
「このあと、また晴れるのかな」
「そうッスね……たぶん晴れると思うッス」
少しだけ弱くなった雨の音を聞きながら、彼の鎖骨あたりに頭を預ける。
窓の向こうは相変わらず灰色だけれど、そんな空の色も、私はきれいだと思うんだ。
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