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Smoke×Silhouette
透明な硝子戸の向こう側。
夜に浮かぶ光が点々と散らばる中、一筋の紫煙が風になびいて薄れていく。
「あ、おかえりなさいッス」
「消さないで」
「へ?」
まだ長いそれが携帯灰皿に押し付けられるのを阻止し、適当にサンダルを突っかけて彼の横に並ぶ。
「吸ってる姿、見たいの」
煙草は嗜む程度だという彼の喫煙姿は貴重だ。せっかく彼の真似をして静かに帰宅したのだから、きちんと最後まで見せてほしい。
「なら、せめてこっちッスね」
彼は煙草を持つ手を軽く上げ、風下にいた私と位置を入れ替える。
「別に気にしなくていいのに」
「自分が気になるんスよ」
さすが気遣いの達人というべきか。さりげなくそういうことができてしまうところが、すごく好きだ。
夏の気配が濃くなった空気に向かって、私も煙草吸ってみようかなぁ、なんて呟いてみる。シガーキスとか、実は少し憧れていたりするのだ。
「あんまりオススメはしないッス」
案の定返ってきたのはそんな台詞。絶対に駄目とは言わないところが彼らしい。
「じゃあ、代わりのちょうだい」
フィルターに触れていた唇を見つめれば、吐き出された煙がわずかにこちらを向いた。
「……苦いッスよ?」
「うん」
鼻先を掠めるその香りに酔ってしまいそう。
ふわりとやわらかな髪が近づくのを感じながら、ぬるい風と甘い煙の中でゆっくりと瞳を伏せた。
透明な硝子戸の向こう側。
夜に浮かぶ光が点々と散らばる中、一筋の紫煙が風になびいて薄れていく。
「あ、おかえりなさいッス」
「消さないで」
「へ?」
まだ長いそれが携帯灰皿に押し付けられるのを阻止し、適当にサンダルを突っかけて彼の横に並ぶ。
「吸ってる姿、見たいの」
煙草は嗜む程度だという彼の喫煙姿は貴重だ。せっかく彼の真似をして静かに帰宅したのだから、きちんと最後まで見せてほしい。
「なら、せめてこっちッスね」
彼は煙草を持つ手を軽く上げ、風下にいた私と位置を入れ替える。
「別に気にしなくていいのに」
「自分が気になるんスよ」
さすが気遣いの達人というべきか。さりげなくそういうことができてしまうところが、すごく好きだ。
夏の気配が濃くなった空気に向かって、私も煙草吸ってみようかなぁ、なんて呟いてみる。シガーキスとか、実は少し憧れていたりするのだ。
「あんまりオススメはしないッス」
案の定返ってきたのはそんな台詞。絶対に駄目とは言わないところが彼らしい。
「じゃあ、代わりのちょうだい」
フィルターに触れていた唇を見つめれば、吐き出された煙がわずかにこちらを向いた。
「……苦いッスよ?」
「うん」
鼻先を掠めるその香りに酔ってしまいそう。
ふわりとやわらかな髪が近づくのを感じながら、ぬるい風と甘い煙の中でゆっくりと瞳を伏せた。
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