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朝食作り
鼻先に香ばしい塩気を感じたのと、設定したアラームが鳴ったのは同時だった。
枕の横に置いてあるスマホを手探りで見つけ、アラームを止める。隣のスペースはすでに空っぽ。私と違って目覚ましに頼らない彼は、今日もきちんと早起きをしたらしい。
それにしても、このいい匂いは一体……。ご近所さんから? って、そんなわけないか。でも、それならどうして。コンロは、私しか使わないはずなのに。
……まさか。
私は急いでベッドを出て、なるべく足音を立てないようにキッチンに向かう。開いている扉からこっそり中を窺うと、そこには想像した通りの光景が広がっていた。
フライ返しを持ってコンロの前に立つ、彼の後ろ姿。私は思わず息を飲む。
「名前。おはよう」
「お、おはよう。……何してるの?」
「? 朝ごはん、作ってる」
「!」
見ればわかることなのに、確かめずにはいられなかった。本当に、彼が朝食を作っているなんて。
私は彼のそばまで歩み寄り、横からフライパンの中を覗く。ジュージューと美味しそうな音を立てているそれは、ほどよく焼き色のついたベーコンと、少し形が崩れた目玉焼き。どちらも私がよく朝食にしているものだ。
いつもと違うのは、ここに立っているのが彼だということと、私が普段食べている倍の量が焼かれているということ。
「もしかして、一緒に食べるの?」
「うん。金剛が、朝もちゃんと食べたほうがいいって」
朝食を食べるのはいつも私だけだった。彼は水分を摂るだけで、それ以外は口にしない。食べないの? と聞いても、今は空いてないの一点張り。無理に食べさせることはないと思っていたけれど、一人で食べるのはやっぱり少し寂しかった。
そんな日々を思い返すと、なんとも言い難い感動で胸がいっぱいになる。だんだん目頭も熱くなってきて、私は両手でそっと瞼を押さえた。
「名前、泣いてる……?」
「いや……なんか、嬉しくて……」
「名前は、嬉しいと泣く?」
「嬉しいと、涙が出るときもあるの」
ご飯を作ってくれたことと、それを一緒に食べてくれること。あと、我が子の成長の瞬間に立ち会えた親のような気持ちがして嬉しい。そう感じたままを伝えれば、「名前はボクの親じゃない」なんてはっきりと言われ、思わず笑ってしまう。
泣いたり笑ったり、私が何を言ってるかわからないとでも言いたげな彼の表情に、またふんわりとあたたかな気持ちが広がった。
少しだけ焦げてしまったベーコンと目玉焼きを、トーストとともに白いお皿に盛りつける。それを二人で食卓に運び、いただきます。と声を揃えた。
「朝ごはん、これからは毎日ボクが作る」
「嬉しいけど……毎日じゃなくてもいいよ? 交代で、とか」
「どうして? ボクが作れば、名前は喜ぶ」
「だからだよ。私が作ったのも、一緒に食べてほしいな」
「名前が作ったものをボクが食べたら、名前は嬉しい?」
「うん。すっごく嬉しい」
「じゃあ、そうする」
「ふふ、ありがとう」
愛しい人と共有できる時間が増え、いつものメニューがいっそう美味しく感じられる。
またひとつ、彼から幸せをもらってしまった。明日は私の番だから、お返しに彼が喜んでくれそうなものを一品付け足してみようかな。
鼻先に香ばしい塩気を感じたのと、設定したアラームが鳴ったのは同時だった。
枕の横に置いてあるスマホを手探りで見つけ、アラームを止める。隣のスペースはすでに空っぽ。私と違って目覚ましに頼らない彼は、今日もきちんと早起きをしたらしい。
それにしても、このいい匂いは一体……。ご近所さんから? って、そんなわけないか。でも、それならどうして。コンロは、私しか使わないはずなのに。
……まさか。
私は急いでベッドを出て、なるべく足音を立てないようにキッチンに向かう。開いている扉からこっそり中を窺うと、そこには想像した通りの光景が広がっていた。
フライ返しを持ってコンロの前に立つ、彼の後ろ姿。私は思わず息を飲む。
「名前。おはよう」
「お、おはよう。……何してるの?」
「? 朝ごはん、作ってる」
「!」
見ればわかることなのに、確かめずにはいられなかった。本当に、彼が朝食を作っているなんて。
私は彼のそばまで歩み寄り、横からフライパンの中を覗く。ジュージューと美味しそうな音を立てているそれは、ほどよく焼き色のついたベーコンと、少し形が崩れた目玉焼き。どちらも私がよく朝食にしているものだ。
いつもと違うのは、ここに立っているのが彼だということと、私が普段食べている倍の量が焼かれているということ。
「もしかして、一緒に食べるの?」
「うん。金剛が、朝もちゃんと食べたほうがいいって」
朝食を食べるのはいつも私だけだった。彼は水分を摂るだけで、それ以外は口にしない。食べないの? と聞いても、今は空いてないの一点張り。無理に食べさせることはないと思っていたけれど、一人で食べるのはやっぱり少し寂しかった。
そんな日々を思い返すと、なんとも言い難い感動で胸がいっぱいになる。だんだん目頭も熱くなってきて、私は両手でそっと瞼を押さえた。
「名前、泣いてる……?」
「いや……なんか、嬉しくて……」
「名前は、嬉しいと泣く?」
「嬉しいと、涙が出るときもあるの」
ご飯を作ってくれたことと、それを一緒に食べてくれること。あと、我が子の成長の瞬間に立ち会えた親のような気持ちがして嬉しい。そう感じたままを伝えれば、「名前はボクの親じゃない」なんてはっきりと言われ、思わず笑ってしまう。
泣いたり笑ったり、私が何を言ってるかわからないとでも言いたげな彼の表情に、またふんわりとあたたかな気持ちが広がった。
少しだけ焦げてしまったベーコンと目玉焼きを、トーストとともに白いお皿に盛りつける。それを二人で食卓に運び、いただきます。と声を揃えた。
「朝ごはん、これからは毎日ボクが作る」
「嬉しいけど……毎日じゃなくてもいいよ? 交代で、とか」
「どうして? ボクが作れば、名前は喜ぶ」
「だからだよ。私が作ったのも、一緒に食べてほしいな」
「名前が作ったものをボクが食べたら、名前は嬉しい?」
「うん。すっごく嬉しい」
「じゃあ、そうする」
「ふふ、ありがとう」
愛しい人と共有できる時間が増え、いつものメニューがいっそう美味しく感じられる。
またひとつ、彼から幸せをもらってしまった。明日は私の番だから、お返しに彼が喜んでくれそうなものを一品付け足してみようかな。
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