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掃除機をかける
「足、吸われてぇのか」
「嫌でーす」
近づいてくる掃除機をわざと無視していれば、足にヘッド部分をコツコツとぶつけられる。ぜんぜん痛くはないけれど、このままだと本当に吸われかねない。
私はそそくさとソファの上に避難し、そこから働く掃除機の姿を目で追いかけた。
身長に合わせて簡単に長さが変えられるコードレスタイプのそれは、同棲を始めるときに二人で買ったもの。楽そうだしルンバにする? と提案もしたけれど、ちょこまか動かれると気が散るからとすぐに却下された。
この男、ガサツそうに見えて案外繊細である。
あと結構綺麗好き。
「明日から私が当番か〜」
「サボんなよ」
「わかってますー」
太い腕が前後に動いている様は、まるで筋トレをしているようにも見える。ガタイがいい分ウエスト周りは細く見えて、つい後ろからガッと掴みたい衝動に駆られる。けれどそんなことをしたら自分が痛い目を見るのがわかりきっているから、そこはぐっと我慢だ。
しばらくの間、掃除機の音を聞きながら適当にスマホをいじる。やがてスイッチが切られ、辺りに静寂が戻った。換気のためにと窓が開けられれば、冬目前の冷たい風が容赦なく部屋の中を駆け巡る。
「寒い〜」
「ちったぁ我慢しろ」
「うぅ……」
手を洗うため流し台の前に立った彼を見て、私は急いでスマホの画面を閉じる。そして彼に駆け寄り、後ろからぎゅっとその腰に抱きついた。
もともと体温が高いのもあるけれど、今まで動いていたのも相俟って、その背中はとても温かい。
「ねぇ、今年こそ炬燵買わない?」
「お前出なくなるだろ」
「よくおわかりで」
「じゃあ買えねぇな」
「え〜」
私の腕を解いてこちらに体を向けた彼は、洗ったばかりの手をそのまま私の首に近づけてくる。
ひっ! と仰け反ろうとしたときにはもう遅い。私の声にならない悲鳴と、彼の楽しそうな笑い声が、乾いた透明な空気によく響いた。
「足、吸われてぇのか」
「嫌でーす」
近づいてくる掃除機をわざと無視していれば、足にヘッド部分をコツコツとぶつけられる。ぜんぜん痛くはないけれど、このままだと本当に吸われかねない。
私はそそくさとソファの上に避難し、そこから働く掃除機の姿を目で追いかけた。
身長に合わせて簡単に長さが変えられるコードレスタイプのそれは、同棲を始めるときに二人で買ったもの。楽そうだしルンバにする? と提案もしたけれど、ちょこまか動かれると気が散るからとすぐに却下された。
この男、ガサツそうに見えて案外繊細である。
あと結構綺麗好き。
「明日から私が当番か〜」
「サボんなよ」
「わかってますー」
太い腕が前後に動いている様は、まるで筋トレをしているようにも見える。ガタイがいい分ウエスト周りは細く見えて、つい後ろからガッと掴みたい衝動に駆られる。けれどそんなことをしたら自分が痛い目を見るのがわかりきっているから、そこはぐっと我慢だ。
しばらくの間、掃除機の音を聞きながら適当にスマホをいじる。やがてスイッチが切られ、辺りに静寂が戻った。換気のためにと窓が開けられれば、冬目前の冷たい風が容赦なく部屋の中を駆け巡る。
「寒い〜」
「ちったぁ我慢しろ」
「うぅ……」
手を洗うため流し台の前に立った彼を見て、私は急いでスマホの画面を閉じる。そして彼に駆け寄り、後ろからぎゅっとその腰に抱きついた。
もともと体温が高いのもあるけれど、今まで動いていたのも相俟って、その背中はとても温かい。
「ねぇ、今年こそ炬燵買わない?」
「お前出なくなるだろ」
「よくおわかりで」
「じゃあ買えねぇな」
「え〜」
私の腕を解いてこちらに体を向けた彼は、洗ったばかりの手をそのまま私の首に近づけてくる。
ひっ! と仰け反ろうとしたときにはもう遅い。私の声にならない悲鳴と、彼の楽しそうな笑い声が、乾いた透明な空気によく響いた。
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