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懐かしのゲームで遊んだら。(鷹見)
「あれ、またそれで遊んでるんだ」
ソファに仰向けで寝転がる私に声が落ちた。逆光のせいでその表情は窺えないけれど、なんだか含みのある言い方に少しだけ違和感を覚える。
駄目だった? と問えば、そうじゃないけど、とどこか歯切れの悪い答えが返ってきた。
先日まで古いおもちゃ箱の中に入れっぱなしだった携帯ゲーム機。久しぶりに触ってみたら当時の楽しさが蘇って、最近は暇さえあればこうして時間を潰している。
カセットは、今でも世代を問わず大人気の、赤い帽子と口髭がトレードマークのキャラクターのものだ。ジャンプしてコインをゲットし、出てきたキノコで体を大きくする。たしか、もうすぐでスターがある場所だったような。
「どこだっけ…………っ、」
昔の記憶を手繰り寄せながらコースを進んでいたとき、不意に私と画面の間に何かが割り込んだ。
カチャリ。顔に当たったのは誰かさんの眼鏡と、やわらかくて意地悪な唇。
「……ねぇ」
「ごめんね」
視界が明るくなってから見た画面には、私を嘲笑うかのようにゲームオーバーの文字が踊っていた。
せっかく無敵になれるところだったのに、なんてことをしてくれたんだ。じとりと視線で咎めれば、私の邪魔をした唇がさも当然のように言い訳を述べる。
「君があまりにも夢中になっていたから」
綺麗に眉尻を下げたって、まったく悪いと思っていないのはわかっている。罰としてここクリアして。そう言ってゲーム機を渡せば、はいはいと涼しい顔であっさりクリア。まったく、腹立たしいことこの上ない。
「次、ここね」
今度は邪魔してやるからなとラスボスとの戦いを指示する。負けたらごめんねなんて嘘くさい笑顔を無視して、私はソファの上で臨戦態勢をとった。
ゲームが始まると同時に彼の脇腹をつつく。我慢しているのか、あまり効果はない。
次、耳に息を吹きかけてみる。肩をすくめれば手元が狂うはず。が、これでもあまり動じない。こうなったら。
私はスッと姿勢を正し、彼の両耳の後ろに手をやった。そして、眼鏡の先端に指先を置き――
カチャカチャカチャカチャカチャカチャ
「ちょっと、それはさすがに……」
眼鏡を高速で上下に揺さぶってやると、彼は困ったように笑い声をもらした。
どうだ、これでもうゲームオーバーだろう。そう思って画面を覗いたけれど、彼の手に操作されているキャラクターは、今もなお着実に敵を弱らせている。……本当、末恐ろしい男だ。
やがて操作する手が止まり、私の大事なおもちゃが机の上に放置される。煩わしそうに外された眼鏡もまた然り。
「これでもう邪魔モノはなくなったかな」
清々しさの中に妖艶な色を滲ませた瞳が近づいてくる。背中がソファに当たれば、もう逃げ場はなかった。
そういうとこ、嫌い。
最後の足掻きとして放とうとした悪態は、口から出る前に吐息ごと彼に呑まれてしまう。
直前に盗み見た画面の中では、赤い帽子の彼が無事お姫様を救い出していた。
「あれ、またそれで遊んでるんだ」
ソファに仰向けで寝転がる私に声が落ちた。逆光のせいでその表情は窺えないけれど、なんだか含みのある言い方に少しだけ違和感を覚える。
駄目だった? と問えば、そうじゃないけど、とどこか歯切れの悪い答えが返ってきた。
先日まで古いおもちゃ箱の中に入れっぱなしだった携帯ゲーム機。久しぶりに触ってみたら当時の楽しさが蘇って、最近は暇さえあればこうして時間を潰している。
カセットは、今でも世代を問わず大人気の、赤い帽子と口髭がトレードマークのキャラクターのものだ。ジャンプしてコインをゲットし、出てきたキノコで体を大きくする。たしか、もうすぐでスターがある場所だったような。
「どこだっけ…………っ、」
昔の記憶を手繰り寄せながらコースを進んでいたとき、不意に私と画面の間に何かが割り込んだ。
カチャリ。顔に当たったのは誰かさんの眼鏡と、やわらかくて意地悪な唇。
「……ねぇ」
「ごめんね」
視界が明るくなってから見た画面には、私を嘲笑うかのようにゲームオーバーの文字が踊っていた。
せっかく無敵になれるところだったのに、なんてことをしてくれたんだ。じとりと視線で咎めれば、私の邪魔をした唇がさも当然のように言い訳を述べる。
「君があまりにも夢中になっていたから」
綺麗に眉尻を下げたって、まったく悪いと思っていないのはわかっている。罰としてここクリアして。そう言ってゲーム機を渡せば、はいはいと涼しい顔であっさりクリア。まったく、腹立たしいことこの上ない。
「次、ここね」
今度は邪魔してやるからなとラスボスとの戦いを指示する。負けたらごめんねなんて嘘くさい笑顔を無視して、私はソファの上で臨戦態勢をとった。
ゲームが始まると同時に彼の脇腹をつつく。我慢しているのか、あまり効果はない。
次、耳に息を吹きかけてみる。肩をすくめれば手元が狂うはず。が、これでもあまり動じない。こうなったら。
私はスッと姿勢を正し、彼の両耳の後ろに手をやった。そして、眼鏡の先端に指先を置き――
カチャカチャカチャカチャカチャカチャ
「ちょっと、それはさすがに……」
眼鏡を高速で上下に揺さぶってやると、彼は困ったように笑い声をもらした。
どうだ、これでもうゲームオーバーだろう。そう思って画面を覗いたけれど、彼の手に操作されているキャラクターは、今もなお着実に敵を弱らせている。……本当、末恐ろしい男だ。
やがて操作する手が止まり、私の大事なおもちゃが机の上に放置される。煩わしそうに外された眼鏡もまた然り。
「これでもう邪魔モノはなくなったかな」
清々しさの中に妖艶な色を滲ませた瞳が近づいてくる。背中がソファに当たれば、もう逃げ場はなかった。
そういうとこ、嫌い。
最後の足掻きとして放とうとした悪態は、口から出る前に吐息ごと彼に呑まれてしまう。
直前に盗み見た画面の中では、赤い帽子の彼が無事お姫様を救い出していた。
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