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Bと半分こ
ミズキ
仕事帰りにコンビニで買ってきた肉まんとピザまんを、どっちがいい? と聞きながら彼に差し出す。いつも夕飯ができあがるまで「腹減った。メシまだかよ」って騒ぐから、それまでの繋ぎだ。
嬉々として肉まん! と即答した彼にそれを渡し、私も残ったほうを一口かじる。
「そっちもうまそーだな」
「半分食べる?」
「おう」
真ん中で二つに割り、欠けていないほうを彼に手渡す。すると「サンキュー!」と嬉しそうに犬歯を覗かせるから、彼と同じく単純な私は毎度「買ってきてよかった」なんて思うのだ。
「やっぱピザまんもうめーな! あ、お前も肉まん食うか?」
「ううん、大丈夫。全部食べていいよ」
「そーか? んじゃエンリョなく!」
遠慮なんてしたことないくせに。そう心の中で突っ込みながらも、食べ物を頬張る彼からは目を逸らすことができない。
その笑顔を見ているだけで、私はいつも胸がいっぱいなんだから。
***
リコ
テーブルランプがやわらかくベッド横を照らす中、同僚から聞いたタイトルを動画サイトで検索する。イヤホンを装着し、流れてくる澄んだメロディーに耳を傾けていれば、寝る準備を整えた彼が静かに肩を寄せてきた。
「なに聴いてんの?」
「同僚にお勧めされたやつ。癒しとか、安眠効果があるんだって」
「ふーん」
「一緒に聴く?」
「ん」
並んで布団に潜り、向かい合って、お互いをイヤホンで繋ぐ。
「これは……すぐ寝ちゃいそう……」
「ほんとだ、もう目がとろんとしてる」
可愛い、と彼の手が私の髪を撫でるたび、魔法がかかったように瞼が重くなっていく。
外しといてあげるからそのまま寝なよ。そんな穏やかな声をどこか遠くで聞きながら、私は水の底へと沈むように、ゆらゆらと薄れゆく意識を手放していった。
***
ヒース
先日までの残暑は鳴りを潜め、徐々に冷えた空気を纏い始める秋の夜。
鉛筆を握り紙に向かっている彼の背中を、後ろから毛布でそっと包み込む。すぐに立ち去ろうとすれば呼び止められて、もう少しここにいて、なんて上目遣いが胸を掴んだ。
「毛布、アンタも入って」
「邪魔にならない?」
「ならないから、早く」
「ふふ、わかった」
毛布の端を持ったまま彼の肩に寄り添う。直に伝わってくる鉛筆を走らせるときの振動は、彼がこの世界にその存在を刻み付けている証。この振動が止んでしまうのはいつかなんて、そんなこと、考えたくもない。
「もう少ししたら、温かくして寝ようね」
「……心配しすぎ」
「当たり前だよ」
きっと、私だけじゃない。その声や歌詞、音に魅せられたたくさんの人々が、まだまだ彼の紡ぎ出す言葉を受け止めていたいんだ。
***
藍
よく晴れた秋空が眩しい日曜の午後。彼の愛犬サブのお散歩も兼ねて、ピクニックができる広い公園に足を運んだ。
レジャーシートにお弁当。ほどよく影ができる木のそばで寛いでしまえば、当然のように睡魔が私たちを襲う。サブも走り回って疲れたのか、私の膝にちょこんと顎を乗せておとなしくなった。
「あっ、サブずるい! オレもねぇちゃんの膝枕で寝る!」
言うが早いか、彼は私の腿の上にごろんと寝転ぶと、サブとは違う重みに戸惑う私を無邪気に見つめてくる。
「そんなに見られると恥ずかしいよ……」
「え〜! 可愛いのにー!」
顔を隠そうとする私の両手首を掴み、オレだけの特権やろ? と笑う彼をどうして拒むことができようか。そのまま導かれた手でそっと青い髪を撫でれば、愛らしいピンク色の瞳が気持ちよさそうに細められた。
「ねぇちゃんをオレと半分こできるなんて、サブだけやからなー」
「ワン!」
***
金剛
「そっちの荷物、重くないかな」
「大丈夫。今日も軽いのしか入れてくれなかったでしょ」
「まぁ、そりゃあね」
近所のスーパーへ二人で歩いて行ったときは、荷物を二つに分けて一袋ずつ持つことにしている。もちろん、空いているほうの手を繋ぐためだ。
「今日は冷たいね。寒い?」
「ちょっとだけ」
昼間は陽射しが温かくても、日が暮れてしまえば乾いた空気が肌を冷やす。
真冬の寒さは得意ではないけれど、今くらいの天候はむしろ好きだ。大きくて温かな手に包まれていることを、ひときわ幸せに感じられるから。
「帰ったら先にお風呂入るかい? 夕飯の支度は俺がしておくよ」
「ううん、手伝う。お風呂も一緒がいいな」
「はは、そう言われちゃ断れないな」
だんだんと灯りが増えていく住宅街。どこかでお醤油の香ばしい香りを拾った金風が、時おり私たちの背中を優しく撫でていった。
ミズキ
仕事帰りにコンビニで買ってきた肉まんとピザまんを、どっちがいい? と聞きながら彼に差し出す。いつも夕飯ができあがるまで「腹減った。メシまだかよ」って騒ぐから、それまでの繋ぎだ。
嬉々として肉まん! と即答した彼にそれを渡し、私も残ったほうを一口かじる。
「そっちもうまそーだな」
「半分食べる?」
「おう」
真ん中で二つに割り、欠けていないほうを彼に手渡す。すると「サンキュー!」と嬉しそうに犬歯を覗かせるから、彼と同じく単純な私は毎度「買ってきてよかった」なんて思うのだ。
「やっぱピザまんもうめーな! あ、お前も肉まん食うか?」
「ううん、大丈夫。全部食べていいよ」
「そーか? んじゃエンリョなく!」
遠慮なんてしたことないくせに。そう心の中で突っ込みながらも、食べ物を頬張る彼からは目を逸らすことができない。
その笑顔を見ているだけで、私はいつも胸がいっぱいなんだから。
***
リコ
テーブルランプがやわらかくベッド横を照らす中、同僚から聞いたタイトルを動画サイトで検索する。イヤホンを装着し、流れてくる澄んだメロディーに耳を傾けていれば、寝る準備を整えた彼が静かに肩を寄せてきた。
「なに聴いてんの?」
「同僚にお勧めされたやつ。癒しとか、安眠効果があるんだって」
「ふーん」
「一緒に聴く?」
「ん」
並んで布団に潜り、向かい合って、お互いをイヤホンで繋ぐ。
「これは……すぐ寝ちゃいそう……」
「ほんとだ、もう目がとろんとしてる」
可愛い、と彼の手が私の髪を撫でるたび、魔法がかかったように瞼が重くなっていく。
外しといてあげるからそのまま寝なよ。そんな穏やかな声をどこか遠くで聞きながら、私は水の底へと沈むように、ゆらゆらと薄れゆく意識を手放していった。
***
ヒース
先日までの残暑は鳴りを潜め、徐々に冷えた空気を纏い始める秋の夜。
鉛筆を握り紙に向かっている彼の背中を、後ろから毛布でそっと包み込む。すぐに立ち去ろうとすれば呼び止められて、もう少しここにいて、なんて上目遣いが胸を掴んだ。
「毛布、アンタも入って」
「邪魔にならない?」
「ならないから、早く」
「ふふ、わかった」
毛布の端を持ったまま彼の肩に寄り添う。直に伝わってくる鉛筆を走らせるときの振動は、彼がこの世界にその存在を刻み付けている証。この振動が止んでしまうのはいつかなんて、そんなこと、考えたくもない。
「もう少ししたら、温かくして寝ようね」
「……心配しすぎ」
「当たり前だよ」
きっと、私だけじゃない。その声や歌詞、音に魅せられたたくさんの人々が、まだまだ彼の紡ぎ出す言葉を受け止めていたいんだ。
***
藍
よく晴れた秋空が眩しい日曜の午後。彼の愛犬サブのお散歩も兼ねて、ピクニックができる広い公園に足を運んだ。
レジャーシートにお弁当。ほどよく影ができる木のそばで寛いでしまえば、当然のように睡魔が私たちを襲う。サブも走り回って疲れたのか、私の膝にちょこんと顎を乗せておとなしくなった。
「あっ、サブずるい! オレもねぇちゃんの膝枕で寝る!」
言うが早いか、彼は私の腿の上にごろんと寝転ぶと、サブとは違う重みに戸惑う私を無邪気に見つめてくる。
「そんなに見られると恥ずかしいよ……」
「え〜! 可愛いのにー!」
顔を隠そうとする私の両手首を掴み、オレだけの特権やろ? と笑う彼をどうして拒むことができようか。そのまま導かれた手でそっと青い髪を撫でれば、愛らしいピンク色の瞳が気持ちよさそうに細められた。
「ねぇちゃんをオレと半分こできるなんて、サブだけやからなー」
「ワン!」
***
金剛
「そっちの荷物、重くないかな」
「大丈夫。今日も軽いのしか入れてくれなかったでしょ」
「まぁ、そりゃあね」
近所のスーパーへ二人で歩いて行ったときは、荷物を二つに分けて一袋ずつ持つことにしている。もちろん、空いているほうの手を繋ぐためだ。
「今日は冷たいね。寒い?」
「ちょっとだけ」
昼間は陽射しが温かくても、日が暮れてしまえば乾いた空気が肌を冷やす。
真冬の寒さは得意ではないけれど、今くらいの天候はむしろ好きだ。大きくて温かな手に包まれていることを、ひときわ幸せに感じられるから。
「帰ったら先にお風呂入るかい? 夕飯の支度は俺がしておくよ」
「ううん、手伝う。お風呂も一緒がいいな」
「はは、そう言われちゃ断れないな」
だんだんと灯りが増えていく住宅街。どこかでお醤油の香ばしい香りを拾った金風が、時おり私たちの背中を優しく撫でていった。
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