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純白のメリアに誓う
「俺と結婚してください」
そんなストレートな言葉でのプロポーズを受けてから一週間。今日は二人で指輪を選ぶため、揃ってジュエリーショップに足を運んだ。
きらきらと明るい店内はまるで別世界のよう。こんな場所で自分が買い物をするなんて、正直いまだに信じがたい。それでも高揚する気持ちは隠せていなかったらしく、隣に並ぶ彼が私を見てくすりと笑う。
「楽しみって、顔に書いてある」
「もう……。でも、本当に楽しみ」
「うん、俺も」
店員さんに案内されて、ショーケースをゆっくりと順に眺めていく。大きなダイヤが付いたものや、逆に石がほとんどないシンプルなもの。予算を伝えるとそれに合ったお勧めのものを用意してくれて、二人で何度も「これいいかも」「これもよくない?」なんて頷き合う。
「どれも素敵で迷っちゃうね」
選ぶのに時間がかかるのは覚悟していたけれど、これほどまでに悩んでしまうなんて。どうしたものかと決めかねていると、店員さんがまた違うブランドの指輪を持ってきてくれた。
「もしお花などがお好きでしたら、こちらはいかがでしょうか?」
「お花好きです!」
「ふふ、よかったです。ぜひご覧ください」
新たに並べられた指輪も種類が多く、店員さんは一つ一つ丁寧に説明をしてくれる。
「こちらはスイートピーをモチーフにしたものです。花言葉も一緒に添えておりまして、こちらは『祝福の門出』です」
「祝福の門出」
「はい。そしてこちらはラベンダーで『優しい時間』。こちらのホワイトローズは『尊い愛情』。こちらはアルストロメリアで『幸福な日々』。アルストロメリアにはこの他にも『持続』や『未来への憧れ』といった言葉もございまして、実際に花束にして贈られる場合でも、定番とされている薔薇やチューリップの他に人気のあるお花です」
「アルストロメリア……」
あまり聞き慣れない名前の響きに惹かれて、ついその名を復唱してしまう。すると、彼が優しげな表情で私の顔を覗き込んだ。
「それ、気に入った?」
「うん、なんかいいなぁって。あ、ごめんね、私ばっかり」
「いいよ。名前が気に入ったものなら、それが一番だから」
「……ありがとう」
店員さんからは見えないところでそっと手を握られ、思わず感極まって泣いてしまいそうになる。そんな私に微笑みを残し、彼は私の代わりに店員さんに向き直る。
「じゃあ、このアルストロメリアの指輪をお願いします」
「かしこまりました」
その後滞りなく採寸や購入手続きを済ませ、店を出た私たちは休憩がてら近くのカフェに寄った。席に案内され、ソファに腰を落ち着ける。その途端、緊張の糸が一気にほぐれ、私の口から自然と深い息が抜けていった。
「大丈夫? 疲れた?」
「ううん。さっきまでずっと気を張ってたから、座ったら安心しちゃって。わかってはいたけど、指輪を選ぶのってすっごくドキドキするね」
「まぁ、一生身に着けるものだからね。実は俺も結構緊張してた」
「そうなの? ぜんぜんそんなふうに見えなかったけど」
「必死に隠してただけだよ。ここまで来て、格好悪いところなんて見せられないだろ」
そう言って、彼は少しばつが悪そうに眉尻を下げる。もし緊張してるってわかっても、格好悪いだなんてまったく思わないのに。
「それ、言ったら台無しになるやつじゃない?」
「あぁ、本当だ」
「ふっ……あははっ」
「もう、笑うなって」
何気ない瞬間が、彼と一緒だとこんなにも楽しくなる。きっと似ているところがたくさんあるのだろう。お互いにどこか大人になりきれない感じが、ひどくくすぐったくて愛おしい。
***
数週間後、待ちに待った指輪が私たちの元に届いた。内側には、二人のイニシャルとアルストロメリアの花言葉が刻印されている。
白い日差しが眩しい小さな教会で、私たちは純白のドレスとタキシードに身を包む。牧師や招待客はいない。正真正銘、二人きりの結婚式。
色鮮やかなステンドグラスの下で向かい合うと、ベール越しに彼の姿が目に映る。月並みな言葉しか浮かばないけれど、本当に、本当に格好良い。他にどんな人が白いタキシードを着ても、こんなに爽やかに着こなせる人はきっと彼しかいない。
お互い見惚れるように視線を重ね、そして、二人だけの誓いの言葉を交わす。
「就職したとはいえ、まだまだ安定はしてないけどさ。これからもお互いに支え合って生きていけたらって思ってる」
「うん」
「改めて誓うよ。必ず名前を幸せにする。俺でよかったって、思ってもらえるように」
「私も誓うよ。一緒に幸せになろう。二人でよかったって、思えるように」
「はは、やっぱり君のほうが一枚上手だな」
互いの薬指に、輝く結婚の証を贈り合う。ベールが持ち上げられ、決して離れないという気持ちを込めて手を繋ぐ。
今後もし辛いことや苦しいことがあったら、必ず今日のこの瞬間を思い出そう。どんなに暗い夜に覆われても、きっと私たちを光のもとへ導いてくれる。
「愛してる」
「私も。愛してる」
純白の中で交わした口づけは、今すぐこの身が光の粒になって消えてもいい――そう思えるほど、あたたかく、幸福に満ちたものだった。
でも、消えていいのは今じゃない。ここは通過点であり、始まりの場所。
彼と生きていくと決めたあの日、あの瞬間から、私たちは同じ方向を見て歩いている。強く、そして優しく手を取り合い、二人で一緒に、未来への憧れを抱いて。
「俺と結婚してください」
そんなストレートな言葉でのプロポーズを受けてから一週間。今日は二人で指輪を選ぶため、揃ってジュエリーショップに足を運んだ。
きらきらと明るい店内はまるで別世界のよう。こんな場所で自分が買い物をするなんて、正直いまだに信じがたい。それでも高揚する気持ちは隠せていなかったらしく、隣に並ぶ彼が私を見てくすりと笑う。
「楽しみって、顔に書いてある」
「もう……。でも、本当に楽しみ」
「うん、俺も」
店員さんに案内されて、ショーケースをゆっくりと順に眺めていく。大きなダイヤが付いたものや、逆に石がほとんどないシンプルなもの。予算を伝えるとそれに合ったお勧めのものを用意してくれて、二人で何度も「これいいかも」「これもよくない?」なんて頷き合う。
「どれも素敵で迷っちゃうね」
選ぶのに時間がかかるのは覚悟していたけれど、これほどまでに悩んでしまうなんて。どうしたものかと決めかねていると、店員さんがまた違うブランドの指輪を持ってきてくれた。
「もしお花などがお好きでしたら、こちらはいかがでしょうか?」
「お花好きです!」
「ふふ、よかったです。ぜひご覧ください」
新たに並べられた指輪も種類が多く、店員さんは一つ一つ丁寧に説明をしてくれる。
「こちらはスイートピーをモチーフにしたものです。花言葉も一緒に添えておりまして、こちらは『祝福の門出』です」
「祝福の門出」
「はい。そしてこちらはラベンダーで『優しい時間』。こちらのホワイトローズは『尊い愛情』。こちらはアルストロメリアで『幸福な日々』。アルストロメリアにはこの他にも『持続』や『未来への憧れ』といった言葉もございまして、実際に花束にして贈られる場合でも、定番とされている薔薇やチューリップの他に人気のあるお花です」
「アルストロメリア……」
あまり聞き慣れない名前の響きに惹かれて、ついその名を復唱してしまう。すると、彼が優しげな表情で私の顔を覗き込んだ。
「それ、気に入った?」
「うん、なんかいいなぁって。あ、ごめんね、私ばっかり」
「いいよ。名前が気に入ったものなら、それが一番だから」
「……ありがとう」
店員さんからは見えないところでそっと手を握られ、思わず感極まって泣いてしまいそうになる。そんな私に微笑みを残し、彼は私の代わりに店員さんに向き直る。
「じゃあ、このアルストロメリアの指輪をお願いします」
「かしこまりました」
その後滞りなく採寸や購入手続きを済ませ、店を出た私たちは休憩がてら近くのカフェに寄った。席に案内され、ソファに腰を落ち着ける。その途端、緊張の糸が一気にほぐれ、私の口から自然と深い息が抜けていった。
「大丈夫? 疲れた?」
「ううん。さっきまでずっと気を張ってたから、座ったら安心しちゃって。わかってはいたけど、指輪を選ぶのってすっごくドキドキするね」
「まぁ、一生身に着けるものだからね。実は俺も結構緊張してた」
「そうなの? ぜんぜんそんなふうに見えなかったけど」
「必死に隠してただけだよ。ここまで来て、格好悪いところなんて見せられないだろ」
そう言って、彼は少しばつが悪そうに眉尻を下げる。もし緊張してるってわかっても、格好悪いだなんてまったく思わないのに。
「それ、言ったら台無しになるやつじゃない?」
「あぁ、本当だ」
「ふっ……あははっ」
「もう、笑うなって」
何気ない瞬間が、彼と一緒だとこんなにも楽しくなる。きっと似ているところがたくさんあるのだろう。お互いにどこか大人になりきれない感じが、ひどくくすぐったくて愛おしい。
***
数週間後、待ちに待った指輪が私たちの元に届いた。内側には、二人のイニシャルとアルストロメリアの花言葉が刻印されている。
白い日差しが眩しい小さな教会で、私たちは純白のドレスとタキシードに身を包む。牧師や招待客はいない。正真正銘、二人きりの結婚式。
色鮮やかなステンドグラスの下で向かい合うと、ベール越しに彼の姿が目に映る。月並みな言葉しか浮かばないけれど、本当に、本当に格好良い。他にどんな人が白いタキシードを着ても、こんなに爽やかに着こなせる人はきっと彼しかいない。
お互い見惚れるように視線を重ね、そして、二人だけの誓いの言葉を交わす。
「就職したとはいえ、まだまだ安定はしてないけどさ。これからもお互いに支え合って生きていけたらって思ってる」
「うん」
「改めて誓うよ。必ず名前を幸せにする。俺でよかったって、思ってもらえるように」
「私も誓うよ。一緒に幸せになろう。二人でよかったって、思えるように」
「はは、やっぱり君のほうが一枚上手だな」
互いの薬指に、輝く結婚の証を贈り合う。ベールが持ち上げられ、決して離れないという気持ちを込めて手を繋ぐ。
今後もし辛いことや苦しいことがあったら、必ず今日のこの瞬間を思い出そう。どんなに暗い夜に覆われても、きっと私たちを光のもとへ導いてくれる。
「愛してる」
「私も。愛してる」
純白の中で交わした口づけは、今すぐこの身が光の粒になって消えてもいい――そう思えるほど、あたたかく、幸福に満ちたものだった。
でも、消えていいのは今じゃない。ここは通過点であり、始まりの場所。
彼と生きていくと決めたあの日、あの瞬間から、私たちは同じ方向を見て歩いている。強く、そして優しく手を取り合い、二人で一緒に、未来への憧れを抱いて。
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