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オレンジのひととき
「あ、ちょうどいい枕発見」
「えっ、ちょ、メノウさん!?」
自販機の横からふわりと現れ、制する間もなく私の太腿に頭を乗せた彼。驚いて固まる私に、15分経ったら起こして〜とだけ言い残し、ゆるやかにその瞳を伏せてしまった。
起こしてって……ここで寝るつもり!?
慌てて「メノウさん!」と呼びかけるも、聞こえてくるのは穏やかな息遣いだけ。ハッと我に返り、ひとまずスマホで時刻を確認する。
えっと、15分後だから……。
起こす予定の時刻を覚え、再びスマホを鞄の中にしまう。
「どうしよう……」
腿に感じる重みと、視界に映える鮮やかなオレンジ。起こしてと頼まれてしまった以上、ここから動くことはできない。
そわそわと宙に浮かせていた手を止め、私は胸が高鳴るのを感じながら、ゆっくりとその手をオレンジ色に添えてみた。
さらさら、ふわふわ。
初めて触れたそれは、緊張で強張っていた私の手をやさしくほぐしていくような柔らかさ。指の間をするりと抜けて、掬われてはまた流れるを繰り返す。
なんだか、私まで眠たくなってきちゃうな……。
あまりの心地よさにうとうとするのを堪えながら、私はしばらくの間その鮮やかなオレンジを撫で続けた。
***
「メノウさん、15分経ちましたよ。起きてください」
「ん〜……レッスンの時間……?」
「レッスンとは聞いてないですけど……」
大きなあくびを一つして、メノウさんはよいしょ、と身体を起こす。途端に軽くなった太腿に、なぜだか少しだけ寂しさのようなものを覚えた。
「もっと寝ててもよかった?」
「えっ」
不意に顔を覗き込まれ、自分が数秒間フリーズしていたのだと気づく。
「い、いえ! レッスンですよね! 行ってらっしゃい!」
「ふふ、行ってきます」
高鳴る鼓動を隠すように笑ってみせれば、メノウさんはにこやかに手を振りながら廊下を歩いていく。けれど、もう少しでオレンジ色が見えなくなると思った瞬間、ふわりとまたやわらかな笑みがこちらを向いた。
「忘れるところだった。名前ちゃんの膝枕、最高に寝心地がよかったよ。またよろしくね」
今度こそ廊下の向こうに消えていった背中に、何とも言えないむず痒い気持ちが込み上げる。
次はいつですか、なんてことは恥ずかしくて聞けないけれど。いつかまた来るであろうその時を待ちわびてしまうほど、私にとっても癒しと温もりに満ちた優しいひとときだった。
「あ、ちょうどいい枕発見」
「えっ、ちょ、メノウさん!?」
自販機の横からふわりと現れ、制する間もなく私の太腿に頭を乗せた彼。驚いて固まる私に、15分経ったら起こして〜とだけ言い残し、ゆるやかにその瞳を伏せてしまった。
起こしてって……ここで寝るつもり!?
慌てて「メノウさん!」と呼びかけるも、聞こえてくるのは穏やかな息遣いだけ。ハッと我に返り、ひとまずスマホで時刻を確認する。
えっと、15分後だから……。
起こす予定の時刻を覚え、再びスマホを鞄の中にしまう。
「どうしよう……」
腿に感じる重みと、視界に映える鮮やかなオレンジ。起こしてと頼まれてしまった以上、ここから動くことはできない。
そわそわと宙に浮かせていた手を止め、私は胸が高鳴るのを感じながら、ゆっくりとその手をオレンジ色に添えてみた。
さらさら、ふわふわ。
初めて触れたそれは、緊張で強張っていた私の手をやさしくほぐしていくような柔らかさ。指の間をするりと抜けて、掬われてはまた流れるを繰り返す。
なんだか、私まで眠たくなってきちゃうな……。
あまりの心地よさにうとうとするのを堪えながら、私はしばらくの間その鮮やかなオレンジを撫で続けた。
***
「メノウさん、15分経ちましたよ。起きてください」
「ん〜……レッスンの時間……?」
「レッスンとは聞いてないですけど……」
大きなあくびを一つして、メノウさんはよいしょ、と身体を起こす。途端に軽くなった太腿に、なぜだか少しだけ寂しさのようなものを覚えた。
「もっと寝ててもよかった?」
「えっ」
不意に顔を覗き込まれ、自分が数秒間フリーズしていたのだと気づく。
「い、いえ! レッスンですよね! 行ってらっしゃい!」
「ふふ、行ってきます」
高鳴る鼓動を隠すように笑ってみせれば、メノウさんはにこやかに手を振りながら廊下を歩いていく。けれど、もう少しでオレンジ色が見えなくなると思った瞬間、ふわりとまたやわらかな笑みがこちらを向いた。
「忘れるところだった。名前ちゃんの膝枕、最高に寝心地がよかったよ。またよろしくね」
今度こそ廊下の向こうに消えていった背中に、何とも言えないむず痒い気持ちが込み上げる。
次はいつですか、なんてことは恥ずかしくて聞けないけれど。いつかまた来るであろうその時を待ちわびてしまうほど、私にとっても癒しと温もりに満ちた優しいひとときだった。
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