マイクロノベル

記事一覧

  • 12:16am · 26 Jun 2020

    20200704(土)22:22
     蟹が滑り落ちてくるという。「蟹の魂が」「蟹に魂なんてあるの?」「あるのではないか」「僕はないと思うけど」「では蟹は死んだらどこに行くのだ」「人間だって死んだらどうなるかわからないでしょ」「天国に行くのだ」「そう信じられるうちが華ってやつ」「お主とは気が合わぬようだ」「僕たちいつも気が合わないじゃん」「まあ、そうではある」「蟹は死なない、ただ消え失せるのみ、だよ」「とお主は信じているわけだ」「どっちみちどうなるかなんて誰にもわかんないんだよ、アイスでも食べよ」「今日はソーダ味だ」「やったー!」アイスの好みだけは合うのだから不思議なものだ。
  • 10:10pm · 23 Jun 2020

    20200704(土)22:22
    北風ぴいぷ「南風だよ」「だがこの風が南風だと誰がわかるのだろうか」「なんか生暖かいからたぶん南風」「それはどうかな」「やめて不安になってくるからやめて」「ことによると東風の可能性もある」「馬耳?」「東風」「僕が言いたかったのは今日は暑いってこと」「熱中症にはご注意を!」
  • 9:21pm · 13 Jun 2020

    20200704(土)22:21
    「憂鬱! 頭痛い!」「えっ蟹なのに?」「蟹だからこそだよ!」「いやそんなことはないだろ」「はい、そんなことはありません」「なんで?」「なんでだろうね~」「わかった、元は人間だったからだろ! 俺天才!」「……」「えっ…」
  • 10:46pm · 12 Jun 2020

    20200704(土)22:21
     雨粒が屋根を激しく叩く。こんな雨の日には怪獣がやってくるという。とんとん、ドアを叩く音。開けてはいけない、開けると招くことになる。俺は郵便受けの隙間から怪獣免除認定証をそっと差し出す。「認証しました!」ざっざっと足音が去っていく。元気な怪獣だったな。
  • 10:43pm · 12 Jun 2020

    20200704(土)22:21
    「梅雨でーす!」「それが何か」「雨がいっぱい降って気分が沈むでしょ?」「いや雨好きな人もいるだろ」「蟹は雨が」「嫌いなのか?」「どっちでもないかな」「何なんだよ…」「君が落ち込んでると思って」「そんなことはない、むしろ今日は元気」「ちぇっ」「なんで舌打ちした!?」
  • 10:39pm · 12 Jun 2020

    20200704(土)22:20
    「概念の海老は希望を抱く者のところに現れパートナーとなり絶望を」「悪役じゃん!」「冗談だよぉ」「キャラがわかってないから冗談言われてもわからないよぉ…」「やっぱりエビも怖いじゃないか」「君はすぐそっちの話に持っていこうとする」「海老でーす!」「あーもー!」
  • 10:37pm · 12 Jun 2020

    20200704(土)22:20
    「カニが怖い」「何、失礼だなぁ」「蟹じゃなくてカニだ」「君がやってるゲームのやつならエビだからね」「いやあれどう見てもカニだろ」「エビって書いてあったよ」「カニ!」「エビ!」「カニ!」「エビ!」「呼んだ?」「うわ誰だお前」「海老でーす」「概念の海老…存在してたのかぁ…」
  • 12:34am · 9 Jun 2020

    20200704(土)22:20
    「メリイイイイチューズデイィィ!」「なんだよ蟹、夜中に大声出すなよ。それに全然めでたくないぞ」「めでたくない?」「全然めでたくない」「世の中には火曜日が休みの人もいるというのに」「それはそれ、これはこれ。俺は火曜日仕事なの」「人間の会社なんてやめちゃえば良いのに」「そういうわけにもいかない」「そもそも君が今人間の会社にいるのは何かの蟹的手違いなんだぞ」「まあ、そうかもな」「いかんな…早く蟹神社に行かないと…」「何をぶつぶつ言ってるんだ?」「なんでもないよ、早く寝な」「んー? まあいいか。おやすみ」「おやすみ」
  • 12:29am · 9 Jun 2020

    20200704(土)22:19
    「火曜日になったのか」「そう、『なった』んだ。気分はどう?」「悪かないな」「なってみれば良いものだろ」「ああ、週の二日目というのが絶望感があって良い」「絶望感、それがないと僕たちのような概念は生きてけないからね」「違いない」「メリーチューズデイ、僕たちの今日に栄光あれ」
  • 9:56pm · 3 Jun 2020

    20200704(土)22:19
     真夏の夜空に憧れていたのはそれを観る機会がなかったから。だのに、それを君と見た記憶が頭にずっとこびりついている。そんな記憶はないはずなのに、そう親しくもなかった君と夜空を見た記憶が焼き付いて消えてくれない。おかしいのだ。いつからか。今日もうなされる、一面の星空。