マイクロノベル

記事一覧

  • 12:03am · 21 Jun 2019

    20190630(日)02:47
    仕事が終わらない、と悲鳴を上げる。実際に叫んだりしたら誰もいない職場に反響して警備員さんが飛んできそうだから心の中で叫ぶだけ。最近行方不明者が多いせいで僕の部署にも皺寄せが来て毎日残業ばかり。僕だって仕事なんか放り出してどこか遠くに「その願い、聞き届けた」えっ ─終─
  • 12:35am · 20 Jun 2019

    20190630(日)02:47
    「どんなに夜が憂鬱でも仕事が終わってる、これ最高ね」言いながら彼女がビールを飲んでいる。あれ? ビール飲めないんじゃなかったっけ? 「これはりんごジュースに生クリーム浮かべたやつよ」こんな深夜になんという…「気分よ気分」気分か。じゃあ僕も一杯「蟹には毒だから駄目」ちぇー。
  • 1:59pm · 19 Jun 2019

    20190630(日)02:47
    「蟹は狂気なのか?」髭が伸び放題の作家が部屋の布団の中でモニターを見つめている。「蟹は……」モニターには川が表示され、一匹の小さい蟹がわしゃり。作家は呟く。「どちらでもいいが狂気で友達が減るなら正気の方がいい」そういう問題じゃないだろと蟹は思ったが、言わなかった。
  • 12:48am · 19 Jun 2019

    20190630(日)02:46
    冬を待っている。空が暗くなる冬。雪が積もる冬。嵐の冬。待ち遠しいわけではない。冬が来る度、来なければよかったのにと思う。けれど、待ってしまう。桜舞う春に、かんかん照りの夏に、落ち葉舞う秋に、冬の陰鬱な影を想像してため息。冬。空気が澄む冬。一人でいる。私は冬を待っている。
  • 12:05am · 19 Jun 2019

    20190630(日)02:46
    ポリポリチップスがなくならない。それでも、半分は飼っているブラックホールにくれてやった。ブラックホールは喜んで星の彼方に飛び去ったようだが、終始一貫して全く見えない。いるかどうかわからないというのは不安だが、見る手段はないわけじゃないしまあ。ポリポリと。夜は長い。
  • 11:54pm · 18 Jun 2019

    20190630(日)02:46
    何もかも蟹のせいにしたことがあった。絶望が過ぎてすぐ飽きた。何のせいにすることもできなくなった。息をする場所が見つからなくなった。気付いたときには蟹は既に遠く、手の届かない所まで行ってしまっていた。だから僕は蟹を追うことに決めた。諦めながら信じることにした。蟹のことを。
  • 11:43pm · 18 Jun 2019

    20190630(日)02:45
    昔から深海に憧れがあった。深海は宇宙と似ている。違うのは生き物がいるとはっきりわかっていること。深海に住む生き物が注目されたこともあった。昔の話だ。深いところに住む生き物。独り占めしていたと思っていたそれをみんなはすぐに好きになった。その日から、僕は深海が嫌いになった。
  • 11:35pm · 18 Jun 2019

    20190630(日)02:45
    電話をかけなかった。昔のことだ。かけなければいけない電話だった。僕は電話が嫌いだった。電話を見るだけで背筋は凍り、全身が総毛立つ。日常、なるべく電話に触れる機会は少なくしていた。そんな僕だったから、その電話も避けて隠れた。町の裏、洞窟の奥。それは深海に通じているという。
  • 11:25pm · 18 Jun 2019

    20190630(日)02:45
    ずっともぐもぐし続けられたらいいのに。このおいしい白米をずっと。永遠にもぐもぐした状態のまま時を止めていたい。そして春が来、夏秋とばして冬になる。冬は雪。雪は白。白は白米。そういえば今日はおにぎりの日らしい。前買ったあれ、食べそびれたな。きっと今頃冷蔵庫で凍っている。
  • 11:19pm · 18 Jun 2019

    20190630(日)02:45
    ポリポリチップスをポリポリかじる。隣では傷んだバラが咲いている。ポリポリチップスはまだたくさんある。たくさん食べようと思いたくさん買ったのだ。これで安心、いくら食べてもなくならない。ポリポリチップスを口に入れる。ポリポリ。おいしくもまずくもない。そして私は胃を痛くする。