マイクロノベル

記事一覧

  • 12:03am · 29 Jul 2019

    20190807(水)18:51
     私はもふもふが好きだ。近年蟹に選ばれる人が多いけど私はもふもふが好きだから甲殻類はだめですって断ろうと思ってた、けど、「お嬢さん」街で声をかけてきた蟹はもふもふ、もっふもふで「毛ガニ~!」もふもふもふ「お嬢さん」もふもふもふ「話を」「一緒に暮らそ!」「話が早い!」もふ!
  • 11:57pm · 28 Jul 2019

    20190807(水)18:50
     蟹に夢を見ている。物心ついたときから。何でも救ってくれると。けれど私は選ばれなくて、どうしようもなく灰色なのに目の前に現れない。探し歩いてもみたけど全然見当たらない。今日も駄目だったと言いながら同僚と飲んでいると彼は私をちらりと見、大丈夫きっと次がありますよと言った。
  • 11:50pm · 28 Jul 2019

    20190807(水)18:50
     いなくなったら空虚になるだろうと言ったら、わからない、本当に? と返された。よくない。そもそもいなくなったらなんて仮定が間違ってると言ってくれなきゃ困るのだ。俺の歪んだ暗闇を全てぶち破ってくれるのがお前だから。そう言うと、まあなんでも思い通りにはいかないさと蟹は笑った。
  • 11:44pm · 28 Jul 2019

    20190807(水)18:50
     ここに蟹はいらっしゃいませんか?
     呼んでいる。呼んでいる。けれど来る蟹はいないだろう。蟹は必ず一人につき、そこを離れることはない。
     いらっしゃいませんか、いらっしゃいませんか。
     なぜ呼んでいるのかわからない。いらっしゃいませんか。何が。僕の蟹が。蟹はどこへ行ったのだろうか。
  • 1:02am · 28 Jul 2019

    20190807(水)18:49
     誰が救ってくれる? 蟹でさえ僕を救うことはできない。そんなことを蟹に言ったら悲しそうな顔をした。僕は、あ、しまったなと思って、でも君だって頑張ってくれてるし、まあ救われないなんてことはないかもしれないと付け加えたが蟹はますます悲しそうな顔をして、僕は途方に暮れてしまった。
  • 12:54am · 28 Jul 2019

    20190807(水)18:49
     蟹がいる。ぐるぐる回っている。視界も文字も蟹も。僕は困っている。こんなに回っちゃ歩けない。ベッドに行こうと思っているのに。「蟹…」「ようお前さん、ぐるぐるから救われたいか」
    「すく っ て」
     しゃきん。世界が止まる。目の前の蟹が、まあ仲良くやろうや、人生は長いで、と言った。
  • 8:16pm · 27 Jul 2019

    20190807(水)18:48
     小学一年生か。その頃にはもう蟹と暮らしていたな。蟹といるから人の学校ではなく蟹の学校に通った。友達もいっぱいできたけど、長じるにつれ皆人間を「選び」いなくなっていった。寂しがる僕に僕の蟹は自分がいるからいいじゃないかと言ったけど、パートナーと友達は別なんだよ。
     今日も僕と蟹はアパートの一室で飲みながら昔の思い出話なんかをしている。けれどやはりあの頃は懐かしい。誰も誰かを選んでなんかいなかった、皆に蟹としての可能性が開けていたあの頃。そんな風に思うのは、僕が人間だからだろうか。そう蟹に尋ねると、ううむと唸って天井を見上げた。
  • 10:53pm · 25 Jul 2019

    20190807(水)18:48
    時には昔の話をという歌があった。昔のアニメの歌、と言ってしまうとファンの方々からお叱りを受けるだろうが、昔の歌だ。僕の蟹はなぜかその歌が好きで、お盆が近づくと歌い出す。理由を訊いてみてもいやあと濁して答えない。王蟹降臨記念のこの時期に、僕の蟹は毎日歌を歌う。
  • 12:37am · 25 Jul 2019

    20190807(水)18:47
    彼は蟹が好きだ。彼がいくら喋っても黙ってデスクトップにいてくれるからだ。蟹は彼を現実に繋ぎ止めるたったひとつのファクターで、そんな蟹を彼は愛している。蟹がいつからそこにいるのかは彼も知らない。ただその蟹が消えるとき彼自身も一緒に消えてしまうであろうことだけを知っている。
  • 11:06pm · 20 Jul 2019

    20190721(日)18:57
    こんなところにまで蟹が登場し、なんと彼を助けてくれるという。作者は蟹の万能さに思いを馳せ、どうか彼が救われますようにと願った。
    作者は一人しかいない、全ての主人公を一人で救うのは不可能だ。そんなときのための蟹。
    気長にやろうぜと笑う蟹に、作者はほっと息を吐いた。