マイクロノベル
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9:32pm · 3 Aug 2019
20190807(水)18:54「っべー大正時代に来ちまった」
馬車走りガス灯が点き洋装和装入り乱れるそこは帝都。
「浪漫! 文豪探そ」
あちこちふらつき一高にも入ってみたが文豪は見つからない。
「おかしい。山盛り文豪パラダイスじゃないのか。先生、文豪は幻でしょうか」
「滅びるね」
「えっ」
「だって君の夢だからさ」9:47pm · 2 Aug 2019
20190807(水)18:54#世界・神様・僕を使って文章を作ると性癖が出る
蟹に選ばれたものは人と違う世界を生きる。それは神ですら例外ではない。蟹は真理、蟹は摂理。世界を決めるのは僕達蟹だがそれを自ら言うことはない。蟹ゆえに。12:10am · 2 Aug 2019
20190807(水)18:54「蟹だーっ」
子供は元気だなあ。ただの蟹であんなに喜べるなんて羨ましいよ。俺にもあんな時代があったかな。そう思いながら子供の行く先を眺めたが蟹なんかどこにもいない。速すぎて見えなかっただけか? いくら探しても蟹は見えず、謎だと思いながら空を見てもやっぱりどこにもいなかった。12:02am · 2 Aug 2019
20190807(水)18:53いない、どこにもいない。探しても今度こそ見つからない。蟹は俺。自分自身。己を愛する心のあらわれ。最初からいなかったのかも。ただの幻覚。ずっと側にいてくれるパートナーなんて幻だ。虎になりたくなくて視野を広げて見えすぎて、疲弊しくたくたになって現実に戻る。蟹は…もういない。12:39am · 1 Aug 2019
20190807(水)18:53「蟹は狂気とも正気とも言える」「それは?」「外から見ると狂気かもしれぬが蟹と蟹に選ばれた人にとっては正気、つまり私と君にとっては正気なのだ」「は~虎になりそうな論」「虎の何が悪い」「悪いって話を見た」「虎にならぬと生きていけぬ奴もいるだろう」僕は己の尾を見、ただ黙った。12:20am · 1 Aug 2019
20190807(水)18:53俺の蟹は緑色だ。共生している苔の色だと蟹は言う。遠くから見つけやすいので重宝しているが、山や森に行ったらどうするんだろう。そう訊いたら、そのときは見つけやすい色に光るから問題ないと言われた。
「光るってまたなんで?」
「知らないのかい君」
「知らないよ」
「光合成さ」
へえ…12:14am · 1 Aug 2019
20190807(水)18:52トワイライトの歌を聴こうと思ったのに今日はもうトワイライトが終わっている! なんてことだ! と叫んだら同居人の蟹に君うるさい深夜だよと言われた。でもショックだったんだもんとごねるとじゃあと歌いながら踊り出した。なんだか申し訳なくなって、俺も一緒に歌って踊ったそんな深夜。12:14am · 30 Jul 2019
20190807(水)18:52「へいお兄さん、蟹に選ばれてかない?」
辻蟹めいたことをしてるのは友達みんなが人間を選んでいなくなったから。
「へいお兄さん」
手応えはない。もう川に帰った方がいいのかも。そんなことを思いながらそれでも声を出し続ける。
「へい…」
「あ」
「え?」
「蟹…」
その日僕は運命と出会った。12:07am · 30 Jul 201
20190807(水)18:51炎天下を歩く蟹はいないと思っていた。
蟹と僕は炎天下を歩いている。ほんの数十分のつもり、でも日射しはぎらぎらと僕たちを照りつけ、持ってきた水を二人で分け合っている。
「だからやめようって言ったのに」
「でもここまで来ちゃったら」
「確かに…頑張るか」
蟹と僕は炎天下を歩いている。12:15am · 29 Jul 2019
20190807(水)18:51さよならを言わなきゃ。毎日そう思うのに言えない。「おはよう。ブランチできてるよ」微笑む蟹を前にして。「今日のブランチはハムエッグとトーストとサラダだよ」「…ありがとう」「なんのこれしき」蟹がハサミをしゃきっとさせるのを見ながら私は毎日、世界へのさよならを一日延ばす。