マイクロノベル

記事一覧

  • 11:56pm · 5 Aug 2019

    20190807(水)18:58
    #蟹神話
     大きな蟹が僕たちを守っている。大きな蟹は大きな蟹で、誰の目にも見えはしない。僕たち蟹は基本他の生物に害されることはないが、万が一そのようなことがあった場合は大きな蟹の力で守られるという。大きな蟹については諸説あるが、いつか神を「選ぶ」蟹ではないかと言われている。
  • 10:28pm · 5 Aug 2019

    20190807(水)18:58
    「ハリネズミをつつく!」「だから僕はハリネズミじゃなくて毛蟹」「ハリネズミ!」「毛蟹」「ハリネズミ!」「毛蟹!」「ハリネズミにも蟹にもなれるってかっこいいと思うんだけどなー」「生憎そのようなサービスは承っておりません」「ちぇっ」
     彼女は僕の甲羅をつんつんとつついて膨れた。
  • 10:17pm · 4 Aug 2019

    20190807(水)18:57
    「今日こそアイスを買いに行くんだ!」「だめです22時」「いいじゃんかー」「よくない」「いいじゃ」「あなたの健康を守る蟹」「ウッ身体が! 横暴!」「と思った?」「アッそれはバリバリ君!」「用意してあります」「なんと」「明日は一緒に行きましょう」「バリバリ」「聞いちゃいない」
  • 10:06pm · 4 Aug 2019

    20190807(水)18:57
    「イェーイ一生俺ポエミー」「ネタが古い上に混ざりすぎている」「いいじゃんか~詩的に生きたいんだよ俺は」「ポエミーなどと言い出してる時点で詩的に生きることを恐れている、もっと己に酔わねば」「蟹さ~あんた俺を救いたいのか背中押したいのかどっちなの」「両方だが?」「むむう」
  • 9:57pm · 4 Aug 2019

    20190807(水)18:57
     お願いがしたかった。そんな夢を抱き続け。お願いができなかった。そんな現実を生き続けてきた。そうしてここまで来てしまった彼は今や一人。変えたいわけでもなく、救いを求めるわけでもない。ただぼんやりと夢を思って笑うだけ。昨日も一人、今日も一人。きっと明日も一人が続いている。
  • 9:50pm · 4 Aug 2019

    20190807(水)18:56
     もはや蟹では救われぬ、その結論はあまりにも。それでも蟹が救えると、そう信じるのは間違いだろうか。あいつに俺は見えていない。見えているのに見えていない。失った世界の色はどうしてやれば戻るのだろうか。パートナーではなく協力者を求め、一匹の蟹は走り続ける。
  • 9:44pm · 4 Aug 2019

    20190807(水)18:56
    「どうしてだ、蟹を信じれば救われるって、そう言ったじゃないですか」
    「信心が足りんのだよ。蟹は金を必要とする。全てを捧げる心のない者の前に蟹は現れぬ」
     蟹に選ばれた教祖、その座は磐石。蟹を求めて得られなかったと教団の誰が信じよう。
     世界を諦め絶望した彼は今日も蟹を説き続ける。
  • 9:36pm · 4 Aug 2019

    20190807(水)18:55
     大事にしている物語。そんな言葉がふと浮かぶ。宙をかけるSF、幻獣と交流するファンタジー、愛を抱く物語。でも。物語は本当ではない、物語では救われない。そうですよね?
    「その通り。君を救えるのは」
    「蟹しかいない、わかっています」
     信じていれば救われる。だから今日も、待っている。
  • 9:24pm · 4 Aug 2019

    20190807(水)18:55
     削られる。好きなことをしているはずなのに罪悪感がじわじわ心を苛む。誰からも何も言われるはずがないのに削られていく。仰向けになったり横を向いてみたりして気分を変えようとする。それでも変わらない、削られていく。耐えられなくて、布団に潜り込んで、私はハリネズミになった。
  • 9:44pm · 3 Aug 2019

    20190807(水)18:55
    「うおおアイスがないと俺は生きていけないんだ!」「嘘乙」「嘘じゃない」「は?」「ねーアイス買いに行こう」「22時」「まだいける!」「あなたの健康を守る蟹」「ウッ身体が」「夜におやつはダメ」「横暴!」「と言いたいところでしたがここにダッツが」「神か?」「蟹でーす」「蟹よ!」