マイクロノベル

記事一覧

  • 4:36am · 20 Nov 2022 羊

    20221209(金)18:41
    「あーもうこんな時間だよ」
    「メー」
    「羊、お前はいいなあ。どれだけ眠れなくても次の日寝てても誰にも怒られないんだから」
    「メー」
    「羊……まだ寝ないのか?」
    「メー」
    「……俺は寝るよ。おやすみ、羊」
    「メー」
     目を閉じると羊の体温を隣に感じた。
     もうすぐ夜明けだ。
  • 7:21pm · 9 Nov 2022 羊

    20221209(金)18:40
    「でさあ羊…みんな大変だから、余裕ないんだよ」
    「メー」
    「久しぶりに会っても、それぞれ生活の大変さを述べるばかりでさ」
    「メー」
    「俺だってみんなを助けてやりたいけど、俺も自分自身のメンタルをなんとかしないと何もできないわけでさ…」
    「メー」
    「羊、お前はいいやつだなあ…俺の愚痴を聞いても何一つ文句を言わないし、マウントだって取らない…」
    「メー」
    俺は羊にハンドサインを送ってみせる。
    羊はメーと答えるだけで、何も反応しなかった。
    俺は満足して、布団に入る。
    羊が隣でうずくまる。
    「おやすみ、羊」
    「メー」
    羊は暖かかった。
  • 氷属性の蟹 そのいくつか

    20220920(火)23:00
    「いきなり寒くなったよな」「僕が氷属性じゃなければ君のこと温めてあげられたんだけど」
    「いいよ別に。蟹に温めてもらおうとか思ってないから」
    「えっ君それ……ひどくない?」
    「いや俺はそういう意味で言ったんじゃな」
    「はは。知ってるよ。冗談」
    「はー……」
  • 蘇らない

    20220725(月)17:42
    「何度でも蘇るものがあるらしいね」「例えばどんな?」「うーん……蟹ではないよ」「蟹は蘇らないのか」「蟹はパートナーが消えるとき一緒に消えるのさ」「知ってるけど」「人間は蘇らないだろ。だから、蟹も蘇らない」「……そっか」
  • カニ鍋

    20220725(月)17:36
    「氷のように固められたカニがあるらしいね! それを鍋に入れるとか!」「残酷だと思うか?」「いや? 僕たち蟹はカニじゃない。カニがどんな目に遭おうと僕たちには関係ないのさ」「……へえ」
  • 夜といえば

    20220525(水)23:04
    「夜といえば!」「夜といえば鬱!」「待って君そういうのはナシでしょ」「蟹~俺からそういうの取ったら俺は何もなくなるぞ」「そんな悲しいこと言わないで…」「悲しい? なんで悲しいんだ、これが俺、これこそが俺!」「そうか、ごめん…」「謝るなよ、惨めになるから」「ごめん……」
  • ウソウソフェスティバル

    20220402(土)18:28
     エイプリルフールが終わって四月二日が来たということを嘘に変えるため暗躍した組織があった――
     その名も「ウソウソフェスティバル」!
     組織名じゃなくてお祭りみたいだと文句を言うアルバイターを尻目に頭領ウッソーンは今日もゆく!
     世界を嘘に変えるため!

    「もういい加減認めましょうよ、エイプリルフールは終わったんです」
    「嘘だ!!!!!」
    「土曜日だからいいじゃないですか。これが月曜とかだったら俺も発狂しますけど」
    「土曜日……」
    「土曜日ですよ。俺たちこんなバカみたいな活動してますけど、今日は土曜日です」
    「そうか、土曜日……」
    「わかったらもう家帰りましょ。お腹空きました」
    「アルバイターくん、奢ってくれ……」
    「は!? なんで俺が!?」
    「私の傷心を慰めるためだよ……」
    「なんで!?」
    「明日は日曜日……明後日は月曜日……休みが終わってしまう……」
    「じゃあエイプリルフールはもういいんですか?」
    「そう! 月曜日を嘘にするため! ウソウソフェスティバルは今日もゆく!」
    「うわっいきなり元気にならないでください」
    「行くぞアルバイターくん!」
    「心底嫌だ……」

     がんばれ、ウソウソフェスティバル!
     負けるな、ウソウソフェスティバル!
     毎日が日曜日になるその日まで!

     ~おわり~
  • ■■■いラーメン屋

    20220327(日)19:50
     どこに行ったかわからない?
     お客さん、それ言うの何回目だあ? お客さんはいっつも物失くしてる気がするね。俺の気のせいじゃない気がするんだが。
     何? 失くしたのは命? そうかい?
     お客さんどこからどう見ても生きてる気がするけどねぇ……
     命がラーメンになった? 馬鹿言うんじゃないやい。命はラーメンになんてならないよ。うちの評判落とそうってんならよそでやってくれ。はい、お待ち。
     ……おいしいかい? そりゃよかった。明日も来とくれ、約束だよ!

     次の日。

     何、また失くした? 命を? お客さん……まあ、ラーメン食べなって。
     ラーメンなしでは生きられない? ははあ、大袈裟だねぇ。
     ……大将長生きしてくれよって? 言われなくとも、あんたよりは長生きするつもりだよ。
     おいしかったかい? じゃ、また明日。

     数年後。
     いらっしゃーい! ラーメン食べて生き返りな。
     ……ここまでこられたのは大将のおかげ? 俺ぁラーメン作ってるだけだよ。そしてお客さんはラーメン食べてるだけ。ずっとそんな毎日が続くのさ。何も不安なんてない。
     ありがとう? 何だい改まって、調子が狂うじゃねえか。
     ……また明日な。

     次の日、あの客は店に来なかった。
     次の日も、その次の日も。
     あの客が失くした物を見つけられたのかどうかはわからない。
     でも、どこかで元気でいるといいとは思う。
     あの客がまた来たときのために俺ぁラーメンを作る。毎日作る。
    いつでも帰ってこられるように。
  • こわいラーメン屋

    20220327(日)19:49
     お客さん……味噌ラーメンって名前なの? 偶然だな、俺の店の看板メニューも味噌ラーメンなんだ。今度食べに来てくれよ!

     お客さん……本当に食べに来るとは思ってなかったよ。何が食べたい? え、味噌ラーメン?
     ……へい! 味噌ラーメン一丁!
     ……何? 自分を出してほしかった?
     馬鹿言ってんじゃないやい。そんなことできるかよ。お客さんはこの世にたった一つの……尊い命なんだからよ!

     ……え? 同族を食べることはできない?
     ……気付いちまったなら仕方ない。お客さん、………
     [以降、データは途切れている]
  • センパイは明るい

    20220116(日)20:55
    「僕よく暗いって言われるんだよ。それを気にしててねえ」
    「明るいですよ! センパイめっちゃ明るいです!」
    「慰めはよしてくれ、僕は……」
    「光輝いてます! 後光がさしてます!」
    「えっいやマジで慰めはいらないから……」
    「どんどん光強くなってますよ! センパイマジパねえ!」
    「えっなんかそれなんかおかしくないかってうわー!」
    「あっ空から降りてきた光にセンパイが! センパイー! さらわれてる姿もパねえっす!」
    「言ってないで助けてー!」