マイクロノベル

記事一覧

  • 3:54am · 24 Jun 2019

    20190630(日)02:48
    長く眠りすぎた。仲間たちは既に出ていき、広い部屋に一人取り残されている。そもそも、あんな奴等は仲間ではなかった。あいつらは私を知らない、知らないから無視している。壁ばかり見ていた夜。今は一人、静けさが耳を浸食する。どうして。そう呟いてみても、壁に反響するだけだった。
  • 1:40am · 23 Jun 2019

    20190630(日)02:48
    夜が明けるのがいやなの。そう言った君がいなくなってからどれくらい経ったろう。君のいない部屋で布団にくるまって君が嫌がった夜明けを同じように嫌って、やりすごそうと窓を締め切っているのに聞こえる雀の声。もうそこに夜明けがいる。宙に残った君の声を、朝日が刺して消し去った。
  • 1:15am · 23 Jun 2019

    20190630(日)02:48
    *こころのなか が からっぽだ。 *なにかで うめなければ。 僕は空洞に丸めたハンカチを押し込んだ。空洞は埋まらない。 僕は空洞に昨日買ったハチミツを流し込んだ。すぐに吸収されてしまった。 僕は最後に昨日までの鈍色の記憶たちを押し込んだ。 空洞は埋まり、鉛のように重たくなった。
  • 10:32pm · 22 Jun 2019

    20190630(日)02:47
    カラスの鳴き声が耳を侵略してくる。何時だ? 時計は壊れている。随分と長く眠っていたせいで、カラスが鳴くのがいつ頃なのかすら忘れてしまった。覚えていてもろくなことはない、ただ惨めになるだけだ。俺はベッドサイドに放置してあった最後のウォッカを取って呷った。カアカアカア。
  • 12:03am · 21 Jun 2019

    20190630(日)02:47
    仕事が終わらない、と悲鳴を上げる。実際に叫んだりしたら誰もいない職場に反響して警備員さんが飛んできそうだから心の中で叫ぶだけ。最近行方不明者が多いせいで僕の部署にも皺寄せが来て毎日残業ばかり。僕だって仕事なんか放り出してどこか遠くに「その願い、聞き届けた」えっ ─終─
  • 12:35am · 20 Jun 2019

    20190630(日)02:47
    「どんなに夜が憂鬱でも仕事が終わってる、これ最高ね」言いながら彼女がビールを飲んでいる。あれ? ビール飲めないんじゃなかったっけ? 「これはりんごジュースに生クリーム浮かべたやつよ」こんな深夜になんという…「気分よ気分」気分か。じゃあ僕も一杯「蟹には毒だから駄目」ちぇー。
  • 1:59pm · 19 Jun 2019

    20190630(日)02:47
    「蟹は狂気なのか?」髭が伸び放題の作家が部屋の布団の中でモニターを見つめている。「蟹は……」モニターには川が表示され、一匹の小さい蟹がわしゃり。作家は呟く。「どちらでもいいが狂気で友達が減るなら正気の方がいい」そういう問題じゃないだろと蟹は思ったが、言わなかった。
  • 12:48am · 19 Jun 2019

    20190630(日)02:46
    冬を待っている。空が暗くなる冬。雪が積もる冬。嵐の冬。待ち遠しいわけではない。冬が来る度、来なければよかったのにと思う。けれど、待ってしまう。桜舞う春に、かんかん照りの夏に、落ち葉舞う秋に、冬の陰鬱な影を想像してため息。冬。空気が澄む冬。一人でいる。私は冬を待っている。
  • 12:05am · 19 Jun 2019

    20190630(日)02:46
    ポリポリチップスがなくならない。それでも、半分は飼っているブラックホールにくれてやった。ブラックホールは喜んで星の彼方に飛び去ったようだが、終始一貫して全く見えない。いるかどうかわからないというのは不安だが、見る手段はないわけじゃないしまあ。ポリポリと。夜は長い。
  • 11:54pm · 18 Jun 2019

    20190630(日)02:46
    何もかも蟹のせいにしたことがあった。絶望が過ぎてすぐ飽きた。何のせいにすることもできなくなった。息をする場所が見つからなくなった。気付いたときには蟹は既に遠く、手の届かない所まで行ってしまっていた。だから僕は蟹を追うことに決めた。諦めながら信じることにした。蟹のことを。