マイクロノベル

記事一覧

  • 4:09am · 9 Jul 2019

    20190713(土)18:19
    終わった七夕の屍を眺めている。それは透明でどこにもなく、昇りかけの朝日にしらじらと照らされて。誰にも会えず、いなくなってしまった。去年も一昨年も願いは叶わず。それはそうだ、願いなんて一つもかけてはいないのだから。からっぽの七夕の死骸は朝が来てもずっと、横たわっている。
  • 3:49am · 9 Jul 2019

    20190713(土)18:18
    暗い部屋、屍のように物が転がっている。要不用ごちゃまぜでばらばらと転がるそれらが思考を埋めるが、どのみち部屋は暗いし気にすることでもない。けれど朝が近付いてくるにつれ差し込む光は無惨なそれらを照らし出す。朝などどこかに行ってしまえばいい。呟く言葉は意識に溶け、消えた。
  • 3:38am · 9 Jul 2019

    20190713(土)18:18
    明け方が近い。そろそろスズメが鳴き出す頃だろう。正確な時刻を覚えているわけじゃない。時計を見て適当に言っているだけ。責任なんて持てない。あらゆる責任を回避したせいでこんなところに辿り着いてしまった。後悔は無駄、追憶も無駄。無駄なことばかりして、今日もまた、スズメが鳴く。
  • 9:25pm · 1 Jul 2019

    20190713(土)18:18
    それで夜道を歩いてっと、シャン…シャン…とするんですよ、鈴の音が。ぴったり後ろにくっついて。立ち止まってみっとしばらく鳴った後、フッと止むんです。また歩くと鳴り出す、その繰り返し。大通りの手前で立ち止まって信号待ちをしたらシャン…シャン…で止まった。首筋に生温い風が…
  • 9:49pm · 7 Jun 2019

    20190713(土)18:16
    薄赤い汚れが視界にしみついている。血ではない。充血でもない。では何か。 実は、蟹の甲羅なのではないかと思っている。調理された蟹の甲羅が粉々になったもの。砕かれ磨り潰されしみのように視界に取り憑き汚すもの。蟹。 ただ一つ気になるのは、最近蟹を食べた覚えがないということだ。
  • 12:08am · 30 Jun 2019

    20190630(日)02:50
    蟹がいる。チョコレートの側、PCの上で赤いハサミをうごうごとさせている。つつこうと思ったが、挟まれるといやなので机の下でぐーぱーをする。心配事と連動するかのようにハサミは動いていて、こいつずっとここにいるのかな、と心配だか期待だかわからぬことを考えてチョコレートを食べた。
  • 12:03am · 30 Jun 2019

    20190630(日)02:50
    冬が去った。長い梅雨が、枯れた落ち葉を、白く煙る息を、人々の心から忘れさせる。私の心の中では休暇中の冬が大量の雪を降らせ、空を鉛色に変えている。こんなところでバカンスをしなくてもいいのに。梅雨の機嫌を仰ぐ暇もなく休日を謳歌する冬に、ため息を吐いた。
  • 6:02pm · 26 Jun 2019

    20190630(日)02:49
    雨。胸が詰まっている。どうにもこうにも新たな感情が通らない。好奇心も嬉しさも興奮もお腹で詰まって胃で消える。おしまいだ。こんなことはすぐにでもおしまいにしたい。ずっと詰まっている。身動きができない。雨を切り裂く鳥の声で僕の全てはばらばらになり、奈落に落ちていった。
  • 7:22pm · 24 Jun 2019

    20190630(日)02:49
    わからぬものには近寄らない。それが俺のモットーだ。俺はいつもそうやって後ずさりつつ生きてきた。そろそろ壁にたどり着く。夕日が射した部屋の中、俺はそっと振り返り、壁に手をつき目を閉じた。皆目何もわからぬが、俺が己すらわからなくなったこと、そのことだけはわかっていた。
  • 7:10pm · 24 Jun 2019

    20190630(日)02:48
    崖っぷちにいる。何が、と言われると答えにくいけれど、いる。いつ落ちてもおかしくない。そんな僕を見た友人は崖っぷちやって、と笑った。崖っぷちなんだよ、と必死に主張する。わかったわかった話聞いたるから今日はお前んち行くわ。す、と息が抜けて、小さな声でうんと言った。