マイクロノベル
記事一覧
1:59pm · 19 Jun 2019
20190630(日)02:47「蟹は狂気なのか?」髭が伸び放題の作家が部屋の布団の中でモニターを見つめている。「蟹は……」モニターには川が表示され、一匹の小さい蟹がわしゃり。作家は呟く。「どちらでもいいが狂気で友達が減るなら正気の方がいい」そういう問題じゃないだろと蟹は思ったが、言わなかった。12:48am · 19 Jun 2019
20190630(日)02:46冬を待っている。空が暗くなる冬。雪が積もる冬。嵐の冬。待ち遠しいわけではない。冬が来る度、来なければよかったのにと思う。けれど、待ってしまう。桜舞う春に、かんかん照りの夏に、落ち葉舞う秋に、冬の陰鬱な影を想像してため息。冬。空気が澄む冬。一人でいる。私は冬を待っている。12:05am · 19 Jun 2019
20190630(日)02:46ポリポリチップスがなくならない。それでも、半分は飼っているブラックホールにくれてやった。ブラックホールは喜んで星の彼方に飛び去ったようだが、終始一貫して全く見えない。いるかどうかわからないというのは不安だが、見る手段はないわけじゃないしまあ。ポリポリと。夜は長い。11:54pm · 18 Jun 2019
20190630(日)02:46何もかも蟹のせいにしたことがあった。絶望が過ぎてすぐ飽きた。何のせいにすることもできなくなった。息をする場所が見つからなくなった。気付いたときには蟹は既に遠く、手の届かない所まで行ってしまっていた。だから僕は蟹を追うことに決めた。諦めながら信じることにした。蟹のことを。11:43pm · 18 Jun 2019
20190630(日)02:45昔から深海に憧れがあった。深海は宇宙と似ている。違うのは生き物がいるとはっきりわかっていること。深海に住む生き物が注目されたこともあった。昔の話だ。深いところに住む生き物。独り占めしていたと思っていたそれをみんなはすぐに好きになった。その日から、僕は深海が嫌いになった。11:35pm · 18 Jun 2019
20190630(日)02:45電話をかけなかった。昔のことだ。かけなければいけない電話だった。僕は電話が嫌いだった。電話を見るだけで背筋は凍り、全身が総毛立つ。日常、なるべく電話に触れる機会は少なくしていた。そんな僕だったから、その電話も避けて隠れた。町の裏、洞窟の奥。それは深海に通じているという。11:25pm · 18 Jun 2019
20190630(日)02:45ずっともぐもぐし続けられたらいいのに。このおいしい白米をずっと。永遠にもぐもぐした状態のまま時を止めていたい。そして春が来、夏秋とばして冬になる。冬は雪。雪は白。白は白米。そういえば今日はおにぎりの日らしい。前買ったあれ、食べそびれたな。きっと今頃冷蔵庫で凍っている。11:19pm · 18 Jun 2019
20190630(日)02:45ポリポリチップスをポリポリかじる。隣では傷んだバラが咲いている。ポリポリチップスはまだたくさんある。たくさん食べようと思いたくさん買ったのだ。これで安心、いくら食べてもなくならない。ポリポリチップスを口に入れる。ポリポリ。おいしくもまずくもない。そして私は胃を痛くする。9:44pm · 17 Jun 2019
20190630(日)02:44僕は亀になれない、そう思っていた。 リュックを背負って亀だと気付いた。生まれたときから亀で、亀だから、亀であるせいで。 僕は今も亀として生きている。これからも甲羅を降ろすことはたぶんないのだろう。 何もない僕の存在の証明。それが甲羅であるのかどうかはしかしまだわからない。12:21am · 15 Jun 2019
20190630(日)02:44俺は蟹だったのかもしれない。最後にそう思う。外殻に穴が空き中身が漏れ出した蟹。人の世で生きる蟹に仲間はおらず、消失しながら生きて弱っていなくなる。食べられることさえできぬ、ただ消えるだけの蟹。 海に行けば会えただろうか。そんなことすらわからないまま、意識は途絶えた。