マイクロノベル
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王街大正羊
20221209(金)18:44「ここがすごい! 羊」
「メー」
「ふわふわ・もこもこ・もふもふなど徹底した癒しの触感」
「メー」
「虚無にある四つの本体」
「メー」
「何も考えなくて良い究極の無が得られるんだぞ」
「メー」
「ここがすごい! 俺の羊」
「メー」
「羊の傍で爆睡しようぜ」
「メー」
「はあ……寝よ」
「メー」10:04pm · 5 Dec 2022 羊
20221209(金)18:43「羊ー!」
「メー」
「わかるか!? もう22時! 信じられないぜ、今年が過ぎ去ってゆく……」
「メー」
「助けてくれ羊……俺はもう耐えられない」
「メー」
「全てが足早に駆け去った後、俺はどうすれば良い? 何もなくなった虚無の中で……泣いていればいいのか?」
「メー」
羊の虚無の目が、見ている。
「そうか、だけど羊…お前も虚無だから」
「メー」
「お前が傍に残るのか……」
「メー」
それは絶望であった、が、希望でもあった。
どこまで行っても孤独である「ヒト」という種。その傍にいる「何か」。
妄想なのかもしれない。
撫でる。
「メー」
ふわふわした毛の感触は、しかし、現実だった。1:28am · 5 Dec 2022 羊
20221209(金)18:42「羊」
「メー」
「お前の仮面の下は空洞なのか?」
「メー」
「……」
俺は羊の仮面に手を伸ばす。羊は動かない。
「この仮面の下を見たら、」
「メー」
「俺の空虚も一緒に消えてくれるだろうか」
「メー」
「なーんてな。冗談だよ、はは!」
ぱっと手を上に上げてみせる俺。
「メー」
「ああ、悪い悪い。……寝るか」
「メー」
夢は見なかった。11:37pm · 23 Nov 2022 羊
20221209(金)18:41「うわー羊ー助けてー虚無だよー」
「メー」
「その虚無を人に言うことさえ許されないんだ……」
「メー」
「でも羊、お前には言える」
「メー」
「お前は俺を嫌わないし、否定しないし、見下しもしないからな」
「メー」
「羊、お前がいてよかったよ。お前は……」
「メー」
羊の顔には白い仮面、その目は闇。全ての光を吸収する漆黒の虚無。
それが俺には心地がよくて、何の意思も感情も読み取ることができない羊の顔が俺は好きだった。
羊は何も思わない。羊は俺を見下さない。
「……おやすみ」
「メー」
だから冬でもあたたかい。4:36am · 20 Nov 2022 羊
20221209(金)18:41「あーもうこんな時間だよ」
「メー」
「羊、お前はいいなあ。どれだけ眠れなくても次の日寝てても誰にも怒られないんだから」
「メー」
「羊……まだ寝ないのか?」
「メー」
「……俺は寝るよ。おやすみ、羊」
「メー」
目を閉じると羊の体温を隣に感じた。
もうすぐ夜明けだ。7:21pm · 9 Nov 2022 羊
20221209(金)18:40「でさあ羊…みんな大変だから、余裕ないんだよ」
「メー」
「久しぶりに会っても、それぞれ生活の大変さを述べるばかりでさ」
「メー」
「俺だってみんなを助けてやりたいけど、俺も自分自身のメンタルをなんとかしないと何もできないわけでさ…」
「メー」
「羊、お前はいいやつだなあ…俺の愚痴を聞いても何一つ文句を言わないし、マウントだって取らない…」
「メー」
俺は羊にハンドサインを送ってみせる。
羊はメーと答えるだけで、何も反応しなかった。
俺は満足して、布団に入る。
羊が隣でうずくまる。
「おやすみ、羊」
「メー」
羊は暖かかった。氷属性の蟹 そのいくつか
20220920(火)23:00「いきなり寒くなったよな」「僕が氷属性じゃなければ君のこと温めてあげられたんだけど」
「いいよ別に。蟹に温めてもらおうとか思ってないから」
「えっ君それ……ひどくない?」
「いや俺はそういう意味で言ったんじゃな」
「はは。知ってるよ。冗談」
「はー……」蘇らない
20220725(月)17:42「何度でも蘇るものがあるらしいね」「例えばどんな?」「うーん……蟹ではないよ」「蟹は蘇らないのか」「蟹はパートナーが消えるとき一緒に消えるのさ」「知ってるけど」「人間は蘇らないだろ。だから、蟹も蘇らない」「……そっか」カニ鍋
20220725(月)17:36「氷のように固められたカニがあるらしいね! それを鍋に入れるとか!」「残酷だと思うか?」「いや? 僕たち蟹はカニじゃない。カニがどんな目に遭おうと僕たちには関係ないのさ」「……へえ」夜といえば
20220525(水)23:04「夜といえば!」「夜といえば鬱!」「待って君そういうのはナシでしょ」「蟹~俺からそういうの取ったら俺は何もなくなるぞ」「そんな悲しいこと言わないで…」「悲しい? なんで悲しいんだ、これが俺、これこそが俺!」「そうか、ごめん…」「謝るなよ、惨めになるから」「ごめん……」