マイクロノベル

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  • 2019年10月14日 20:57

    20191014(月)21:04
    「食べられないっ…そんな…お前たちを…」「仲間やろ? ここはサクッといってまえよ」「そうそう! サクッと!」「油ないけどね」「火もない」「え、生?」「生だ」「危なくない?」「お腹壊して死ぬのウケる~」「笑えねえよ!」
  • 2019年10月14日 20:25

    20191014(月)21:03
    「蟹……」「たべないでくださーい!」「鍋……」「正気に戻って!」「だし…蟹…牡蠣…」「牡蠣食べたいなら海行こか? たぶんこの世界にも牡蠣あるで」「マ?」「あ、戻った」「漁、拙者のハサミさばきを見せるとき」「牡蠣取るのにハサミさばきっているのか?」「む」「言葉詰まってるのウケる~」「ほら行くよ海!」「わーい!」
  • 9:47pm · 8 Oct 2019

    20191009(水)22:54
    「む、蟹」「どこ?」「あそこ、塀の上」「ほんとだな」「何してるんだろうね」「そりゃ人間探してんだろ」「やっぱり?」「辻蟹ってやつよ」「手当たり次第に選ぶっていう?」「よくわからんがな」「蟹ハンター呼んだ方がいい?」「バカ、そんな怪しげな組織に頼るなよ」「冗談冗談」
     僕たちは少し不安になりながら蟹の前を通りすぎたが「選ばれた」気配はない。
    「いつまでいるんだろうねあの蟹…」「さあな、人が見つかるまでじゃない?」「頑張れ的な?」「まあそう」「一人なんだね…」「一匹な」「うん…」
     僕は蟹をちらりと振り返る。蟹がこちらを見ることはなかった。
  • 11:27pm · 7 Oct 2019

    20191009(水)22:53
    「む、蟹!」「先輩何言ってんすか蟹なんていませんよ」「あれ?」「いません」「あれ…?」「疲れてるんすか? 今日は早く寝た方がいいですよ」「おかしいな…確かにいたんだけど…」「街中に蟹が歩いてると思いますか?」「うーん…うん…それは」「そうでしょ」「そうかも…」「だからいないんですよ、蟹なんて」「そうかな…」「そうです」そう思っていてくれ。「ほら帰りましょう」いなくならないでくれ。「マック寄りたい」「いいですよ」「今日は月見にしよ」「いいですね」ずっとこのまま。「楽しみだなあ」「そうですね」俺の。「先輩」「何?」「呼んだだけっす」先輩。
  • 1:55am · 7 Oct 2019

    20191009(水)22:53
     空虚。と言葉にするのは簡単だがそれだけではどんな感覚かわからない。しかし、
     空虚は空虚。それ以外の何物でもない。ただ空虚、ただただ空虚、「生きてる?」
    「……」
    「その顔は調子崩してる顔だね……」
    「……」
    「大丈夫、僕がいるよ、大丈夫」
     そう言われても空虚は空虚。しかし、
     このまま無言を続けたら蟹が悲しい気持ちになってしまうかもと思って、その気持ちで頭がそわそわし出して、
    「おかえり」
    とだけ言った。
    「君……」
     と蟹は言ったが、ハサミを一振り、箱を取り出した。
    「ほら、おみやげ。カニカニ水飴だよ」
    「!」
     俺は水飴が好きだ。
    「スプーンついてるやつ買ったんだよね」
    「!!」
     てきぱきと準備をして水飴をすくって渡してくる蟹にありがとうと言い、口に入れる。
     甘い。
     とろける。
    「ふふ」
    「?」
    「なんでもない」
    「…そうか」
     そうして蟹と俺は水飴を食べた。
  • 12:35am · 5 Oct 2019

    20191009(水)22:51
    「蟹、どこにいる? 蟹、どこに…」
     探し続ける男。おかしいな、あの人は選ばれていなかったはずなんだけど。
    「どこに行ってしまったんだ、蟹…」
     選ばれていなかった。
    「蟹、」
     おかしい。

    「成功しましたね」
    「ああ、蟹に干渉し、その繋がりを断ち切る……繰り返していけば、根絶も夢ではない」
    「我々の理想がついに叶うのですね」
    「そうだ、蟹のいない世界……」

    「蟹…どこに行ったんだ……」
     思い出せない。何も――。
  • 9:51pm · 3 Oct 2019

    20191003(木)21:59
    パンをくわえて走った角でぶつかったのは「君!」「蟹ぃいいい!?」蟹だった。「そんなに急いでどこに行くんだい」「学校! 見てわからない!?」「それは失礼」「もー邪魔なところに立たないでよね! それじゃ!」「ははは、また会おう」パンをくわえなおし慌てて駆ける。学校に着いて、思った。あの蟹、「また」って言ってた…?
  • 9:49pm · 3 Oct 2019

    20191003(木)21:59
    重い。ずっと前から、身体が重くてたまらない。原因はわからない、疲れているのかもしれない。引きずるように日々を生きている。呑まれる、呑まれる、絶望――「君」「え?」「しんどそうだね」「え、まあ…」「今日からは自由だ」「は?」「僕が君のパートナーになってあげよう」「はああ?」
  • 9:46pm · 3 Oct 2019

    20191003(木)21:58
    「さて君もパートナーの人間を選ぶ歳になったわけだが」「はい」「蟹とはどんな人間を選ぶ?」「救いを求める人間」「そう」「絶望している人間」「そうだ」「我々は人間を『選ぶ』ことによって救いを与える」「そう。大丈夫そうだな」「カンペキです」「では、達者で」「教官も」「ああ」
  • 2:24pm · 1 Oct 2019

    20191003(木)21:58
    『悲劇の』「違う」『ひ』「蟹はそんなこと言わない」『違うのかい?』「違う!!!!」「どうしたのさ、大きな声出して」「…蟹」「ん?」「僕は…」「んん?」「やっぱいい」「んんー?」「何考えてるんだろ僕、」「言えないなら言わなくてもいいけどさ」「…」「あんまり抱え込むなよ」「うん…」「僕は蟹なんだからさ」「うん…」
    ──言えたらよかったのにな。



    『悲劇』『など』『な』「はいはいはいはいいかんいかん何このイマジナリー蟹は成敗成敗~~~」蟹がハサミを振り回すと、心の声はすっと消え去った。「蟹…なんで」「いやそりゃ蟹だからね? 見えますよそのくらいは」「…」「なんで言ってくれなかったのとかは言わない、そういうもんだし。でもさっきの蟹は危険…闇属性だよ」「闇属性」「そ。あんなのの言うこと真に受けたら潰れちゃう、だからその前に成敗よ」「…」「大丈夫、もういないから」「…ありがとう…」「いいえいいえ! さ、昼ご飯にしよ。トマトパスタだよ!」「! うん!」