マイクロノベル
記事一覧
1:17am · 24 Aug 2019
20190925(水)23:14やさしい。やさしい。「やさしい」やさしい、やさしい「やさしい…?」何度自分に言い聞かせてもやさしくなんてならない。だって世界はやさしくなんてない。それでも、「やさしい、やさしい…そうじゃなきゃ僕は…」今日も無駄な行為をやめられない。1:28am · 19 Aug 2019
20190925(水)23:13そのとき僕は何も言えなくなった。パートナーの人間に対して蟹が何も言えなくなるなんてことは性質上まずないのだけど、いい加減僕もバグがきてるのかもしれない。昔から蟹であることになんだか違和感を感じていたから。そんな僕に選ばれた人間は少し哀れだと思う。
でも、人間は僕がいてよかったといつも言うのだ。それだけで僕は別に僕が蟹でいたっていいのかななんて思うのだが、実際のところはわからない。
蟹なのにぐるぐると考えているのは明らかに不具合だ。神社に行けば治るのだろうか。人間は僕がそういうことを言うのを嫌うから最近はあまり言わないようにしているのだが、不具合の蟹に選ばれてしまったことはやはり申し訳なくて、なんとかしたいと思うばかり。
風鈴の音を聞きながらごめんねと言ったら人間は、別に? 君がいなかったら僕は生きていけないからさと言った。それで僕は何も言えなくなった。夏のある夜のことだった。11:23pm · 18 Aug 2019
20190925(水)23:12「は…元気」「何今の」「いや」「どうかした?」「ため息吐こうとして悪いなと思ってやめた」「別にいいのに。っていうかため息?」「…ちょっと生きるのがね」「なるほどね」「生きてる意味とか…」「まあ蟹である僕のためだろうね」「え?」「何があっても僕は傍にいるってことだよ」「…それはありがたいな」「ありがたいでしょ」「調子に乗るな」11:02pm · 16 Aug 2019
20190817(土)21:29蟹がいないことに気付いたのは数年経ってからだった。ずっと探してきたのに本当はいないなんて。今までしてきたことは全て無駄だったのか? 私はこれまで蟹探しにかけてきた時間、金、労力、失われた交遊関係のことを思い、絶望した。その瞬間、
「やあ」
蟹がいた。10:56pm · 16 Aug 2019
20190817(土)21:29『蟹系創作者ってのがいるらしい』『マジか。どんな作品?』『なんかこの社会のことを書いてるとかなんとか』『創作じゃないなそれは』『確かに。なんで創作者名乗ってるんだろ』『それはともかく蟹作品なら見てみたい』『蟹好きとしては見逃せないよね』『うむ』『検索しよ』『検索しよ』10:48pm · 16 Aug 2019
20190817(土)21:28「電車が怖い」
「あれ、この前まで好きだったんじゃ?」
「好きとは言ってない」
「風景についてめっちゃ語ってたじゃん」
「あれは語りたかっただけで、電車そのものが好きなわけじゃない」
「ややこしいな」
「なんとでも言え」
「で、なんで怖いの」
「でかいし頑丈で速いから」
「あ、そういう」
「車も怖い」
「うん」
「道とか駅とか怖くてヤバい」
「弱ってるねそれは」
「精神強くなりたい…」
「強い弱いの問題じゃないと思うよそれは」
「困った…」
「とりあえず療養願い出しとくね」
「え」
「休んで」
「ホワイトだ…」
「蟹会社はホワイト」
「レッドっぽいのに」
「ホワイトさ」
「…ふ。そういうことにしておく」10:35pm · 16 Aug 2019
20190817(土)21:27「蟹って出張あるの?」「ないよ、仕事じゃないし」「いいな~もう帰りたい」「ゲート開く?」「できるの?」「毎晩帰って寝るとか物取りに行くとかできるよ」「マジか…蟹すごいね…」「行く?」「大丈夫、いつでも帰れるのわかっただけで元気出た」「む」「がんばるぞ」「がんばれだぞ~」10:45pm · 12 Aug 2019
20190817(土)21:27「また足組んでる!」「悪いかよ」「身体が歪むよ」「俺の人生俺の好きにさせて欲しいね」「む」「足組むと落ち着く」「んー…」「ハサミカチカチと一緒」「なるほど」「案外すぐに納得したな」「蟹は道理を重んじるからね」「そうなのか?」「切り替えが速いのさ、ハサミだけに」「はあ」10:29pm · 12 Aug 2019
20190817(土)21:26君の恋は蟹だけを見ているようで、事実その通りでした。君がどこに行ってしまったか僕にはもうわからないけれど、また会えるといいなと思います。後ろ姿だけでもいい、本当は話がしたい。
僕は蟹をうらみます。12:23am · 12 Aug 2019
20190817(土)21:26「隙間には蟹がいるって決まってるのよ」彼女は蟹を探すのが好きだ。「蟹ー」ごそごそと探し回る彼女。だが特に収穫はなく、「残念…今日こそ見つけられると思ったのに…」マックでお茶している。「次はきっと、君もそう思うよね?」「もちろん」見つかる前に消しているのは僕だけど。